2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10291
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 崇行 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 無配生殖 / シダ植物 / 種多様性 / 環境傾度 |
Outline of Annual Research Achievements |
現生する多くの種が有性生殖を行う中、無性生殖が二次的に進化している系統がある。一般的に種子植物では0.1%ほどが無性生殖を持つ一方で、シダ植物では10%近くが無配生殖(無性生殖の一つ)を持ち、無配生殖はシダ植物の進化と多様化に重要であることが示唆される。しかし、なぜシダ植物では無配生殖が比較的多いのかという疑問は解決しておらず、無性生殖の適応的意義や多様化のメカニズムを明らかにする必要がある。 本研究の目的は、このシダ植物の無配生殖の適応的な意義は何かを、環境傾度に沿った無配生殖種の種多様性を解析することから無配生殖種の多様性に寄与する要因の特定と、多様化の制限要因に関する生理生態学的な検証によって明らかにすることである。 今年度は、北海道・長野・九州における同一サンプリングプロトコルによる調査データから標高傾度に沿った無配生殖種の多様性パターンの一般性の検証を行った。無配生殖率の標高傾度に沿った傾向はどの地域でも同様の減少傾向であり、低温環境で無配生殖種は生じないことが発見された。さらに地域間で無配生殖種が生じなくなる標高も変わり、北海道や長野では比較的低標高までしか無配生殖種が生じない一方で、九州ではより高標高まで無配生殖種が生じた。また、無配生殖種は九州から北海道にかけての緯度経度においても減少傾向を示した。これらの結果から、無配生殖種が低温環境において分布を広げることができず、無配生殖種の多様化に低温が制限要因として駆動していることが考えられた。 無配生殖種の多様化に関する生理生態学的検証のため、今年度はシダ植物の生活史初期の段階である前葉体培養のための胞子の収集を進めた。次年度は培養した前葉体の耐寒性を解析し、低温制限に関する検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
胞子サンプルはまだ十分でなく、それに伴い前葉体の培養が遅れている。 また、標高に沿った根茎繁殖の空間パターンを調査する予定であったが、調査予定地が土砂災害により調査が困難になってしまったため、調査解析にいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
無配生殖種の多様化パターンに関して、台湾における同一プロトコルの調査データがそろっているため、生殖様式の情報を集積し解析を進め、亜熱帯から亜寒帯における無配生殖種の多様化を明らかにする。 無配生殖種の耐寒性に関して、引き続き胞子採取とともに前葉体の培養と耐寒性の検証を進める。
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Research Products
(4 results)