2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J10297
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
見目 典隆 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ソ連史 / ロシア史 / 暴力 / 大テロル / 史料調査 / 研究報告 / 極東 / 農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実施計画は大きくまとめて①先行研究の整理、②国内・国外未刊行史料の調査、③研究報告・論文投稿の3つであった。 ①については、本年度は中欧・東欧研究国際協議会(以下ICCEES)への参加、史学会における研究報告が控えていたため、当該報告に合わせて、先行研究の整理を行った。 ②については、本年度は2016年の2月から3月にかけてロシアに出張し史料調査を行った。第一にロシア国立図書館の新聞部、第二にロシア連邦国立文書館、第三にロシア国立社会政治史文書館において当時発行された新聞、未刊行史料を入手した。また、同時に、国際学会"Looking Back, Looking Forward: New Directions in World War II Research"にも参加した。国内においては、防衛省防衛研究所において、対ソ諜報の任に着いていた林三郎の回想録や、満鉄調査部の報告書などを閲覧した。 ③については、本年度は8月にICCEES、11月に史学会において二度の学会報告を行った。具体的には、昨年度末の国外における史料調査、および国内における史料調査によって得られた史料・刊行史料を元に、日本に亡命した政治警察の高官リュシコフの世界観について英語による口頭報告を行った。さらに、スターリンの大テロルを研究対象とする海外の研究者との意見交換も行った。史学会においては、ICCEESと同様にこれまでの史料調査によって得られた史料・刊行史料をもとに、1930年代の極東における大テロルについての報告を行った。論文の投稿には至らなかったものの、2度の研究報告、とりわけICCEESでの報告・意見交換は、欧米の研究者と交流できる貴重な機会であり、研究の現状を整理する上でも役立ち、今後の研究に対してよい刺激となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
端的には、本年度の研究計画のうち、①先行研究の整理、②国内・国外未刊行史料の調査については十分に進んでいるが、③研究報告・論文投稿については、当初の予定とは異なる結果となった。 ①に関しては、中欧・東欧研究国際協議会(以下ICCEES)及び史学会での研究報告に合わせて、リュシコフ脱走事件、また、極東地域における大量抑圧に関する先行研究をほぼ抑えることができた。よって、順調に進んでいるといえる。 ②に関しては、ロシア国立図書館新聞部で、研究対象である1930年代の新聞を調査した。とりわけ、地方紙を中心に、研究対象である公開裁判の記事を収集した。また、ロシア連邦国立文書館では、内務人民委員部、司法人民委員部関連の未刊行史料を調査したが、とりわけ調査が必要であったファイルが秘密扱いに戻され、閲覧することが禁じられたため、当初の期待通りの成果を上げることが出来なかった。さらに、ロシア国立社会政治史文書館では、共産党の史料を中心に、農村分野に関する史料の調査を行った。中央委員会農業経済部門、モロトフの個人フォンドを中心に閲覧し、農業分野における弾圧に関して内務人民委員部からの報告書を得ることが出来た。閲覧の禁止による制約は受けたものの、ロシア史研究においてはつきものの事態であり、やむを得ないと考えられる。よって、不測の事態があったものの、順調に進んでいるといえる。 ③に関しては、本年度2度の研究報告を行ったが、論文の執筆には至っていない。投稿予定の論文は本年度の研究報告に基いて執筆中であり、学術雑誌に投稿する予定である。本年度の研究報告により、投稿予定の論文の枠組みをより幅広く捉え直すことが出来、論文の質の向上が見込まれる。故に、順調に進んでいるといえる。 以上の点から本年度の研究について、予定外の事態が生じたとはいえ、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実施計画は大きくまとめて①先行研究の整理、②国内・国外未刊行史料の調査、③論文の執筆の3つに分けられる。 ①については、前年度に引き続いて、先行研究を整理する必要がある。具体的には、農業分野に関連する先行研究、スターリンの大テロル以降のソ連社会史及び独ソ戦に関する先行研究を整理する予定である。それによって大テロル以前の社会と大テロル以後、独ソ戦の社会を比較する手がかりとする。 ②について、研究目的を達成するためには、ソ連崩壊後に新たに開放された文書館史料を十分に用いる必要がある。このため、平成26年度、平成27年度に引き続き、国内のみならず、ロシア等国外の未刊行史料の調査を行う。具体的には、ロシア連邦国立文書館(GARF)やロシア国立社会政治史文書館(RGASPI)を再訪し、史料調査を行う。特に、農業分野における党関連文書の史料、内務人民委員部など国家機関の史料を調査する予定である。加えて、国内には所蔵の殆ど無い地方紙を収集するべく、ロシア国立図書館新聞部にも再訪し、地方紙の収集を継続する予定である。 ③については、これまでの史料調査の結果、及び学会報告を踏まえて博士論文の一部となる論文を執筆し、学術雜誌に投稿する。具体的には、農業分野における大量抑圧と公開裁判のに関する論文と、極東地方における大量抑圧とリュシコフ脱走事件に関する論文を用意している。
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Research Products
(2 results)