2014 Fiscal Year Annual Research Report
航空用ターボ機械エアロメカニクス分野のための流体-構造連成解析法の開発と応用
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14J10312
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立石 敦 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ターボ機械 / 空力弾性 / 流体-構造連成解析 / システム同定 / 前縁剥離 |
Outline of Annual Research Achievements |
航空用エンジンファンは,軽量化と安全性を両立するために,有害な翼振動の有無が設計時に十分検討される必要がある。本研究は,従来法である流体→構造の片方向解析で扱えなかった,空気力による翼の変形や振動数・振動モードの変化といった連成効果を正しく模擬する流体-構造連成解析による翼振動解析手法や,高精度な流体解析に基づく翼振動解析を,基礎的な検証と応用を通じて確立させることを目標としている。 まず,これまで構築してきた翼振動と変動流の連成解析とシステム同定を応用した翼振動解析手法に対し,翼の自励振動(フラッター)について更なる検証を行った。乱流モデルや解析条件の依存性を排除するために,平板単独翼のフラッター,平板翼列のフラッターについて理論的に最も信頼性の高い解であると考えられる解析解を参照解とし流体構造連成解析結果と比較した。振動特性(流れ中での振動数・減衰率・モード形状)やフラッター発生流速が非常によく一致することが示され,本手法で流体-構造間の相互作用の影響を適切に模擬した振動解析が可能であることが確認できた。 また,大きな剥離を含む流れ場における翼振動解析が可能かを検討するために,Hybrid RANS and LES (HRLES)の使用を想定し,必要な計算コストをRANS結果の乱流長さスケール分布,翼振動周期,必要な翼枚数より試算した。その結果,剥離流と同時に翼振動を計算することはコストが非常に高く,数値解析上の工夫が必要なことが判明した。そこで,非定常流解析結果を用いて乱流モデルを修正する手法を考案し,薄翼翼列に生じる前縁剥離流れ場を用い,修正されたモデルで流れ場が実現されるかを調べた。修正されたモデルは非定常流解析結果を完全には再現しなかったものの,オリジナルのモデルを用いた解析結果に比べると解析結果は大幅に試験結果に近づくことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究活動により,本研究で構築された流体-構造連成解析手法は,信頼できる理論解に基づく検証を通じて,物体の振動特性に対して雰囲気流体の与える影響を正しく評価できることが確認された。これより,連成効果を正しく再現した振動解析手法を構築するという観点からは,当初の目標を達成できたと評価できる。 一方で,ターボ機械において現実に有害な翼振動が発生する条件には,一般に翼振動解析で用いられているRANSによる流体解析ではうまく再現できないであろう流れ場(大剥離,衝撃波バフェット等)が存在する。そのような流れ場における翼振動解析の問題点や困難さが計算コストの試算などから改めて浮き彫りになったが,それを解決するための方策や指針を設定することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ターボ機械における翼振動解析の困難さは,数値解析で模擬することが難しい複雑な流れ場にある。連成解析手法は自体は完成したので,次に取り組むべき課題としては,対象とする流れ場がうまく数値解析で模擬されることが重要であると認識している。そのため,本研究で開発された連成解析手法を発展させて,より実用的な問題に対応できるように,非定常流の数値解析手法と,その結果を翼振動解析へ接続する手法の開発について重点的に取り組んでいきたい。具体的には,翼間1流路の流れ場を精度よく解けるようになることを目標として,本研究のコードで扱った実績のある最大の計算規模が3000万点程度であるところを,格子点数1億点超の問題に対応するべく,数値解析コードを改良したい。それとともに,風洞試験結果を参照した検証を実施する。また,時間スケール・空間スケールの大きく異なる剥離流と翼振動を何としても同時に解くという,計算資源に依存したアプローチは現状として実現が難しい。そのため,詳細な流れ場の解析に基き流れ場をモデル化し翼振動解析に接続する手法の開発に取り組みたい。
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Research Products
(4 results)