2014 Fiscal Year Annual Research Report
自家不和合性におけるエピジェネティックな遺伝子発現制御機構の解明
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14J10324
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
安田 晋輔 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 自家不和合性 / アブラナ科植物 / エピジェネティクス / 優劣性 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アブラナ科植物において、自家不和合性を制御する花粉因子SP11の対立遺伝子間の発現には優劣性の現象が見られる。在来ナタネBrassica rapaでは優性側のSP11近接領域から生産される低分子RNA(Smi)が劣性側のSP11プロモーターのメチル化を誘導して、その発現を数万分の一まで抑制することが強く示唆された。しかしながら、SmiがどのようにしてSP11の発現を強く抑制するのか、その分子機構は不明である。 そこで、Smi依存的なDNAメチル化と発現の抑制に関わる分子群の同定とそのメカニズムの解明を目的として、シロイヌナズナを用いた優劣性モデル実験系の確立を試みた。まず、B. rapaの標的劣性S60-SP11プロモーター:GUSをシロイヌナズナに導入した。導入株では葯特異的なGUS染色が観察され、シロイヌナズナにおいてもB. rapaのS60-SP11プロモーターが機能することが明らかとなった。次に、この株にSmi産生領域を導入し、GUS発現の抑制が起きるかどうかを検証したが、GUS発現は抑制されなかった。原因として、B. rapaのSmiプロモーターがシロイヌナズナにおいて適切な時期に機能しない可能性が示唆された。そこで葯発達ステージの初期から発現誘導することが報告されているイネOsg6Bプロモーターを使用した。Osg6Bプロモーター:GUSをシロイヌナズナに導入したところ、S60-SP11プロモーターの発現に先駆けて、発達ステージのごく初期の葯から発現が誘導されていた。既にOsg6BプロモーターにSmi領域を連結したコンストラクトを作製しており、今後、本コンストラクトによる劣性S60-SP11プロモーター:GUSの発現抑制を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
優性側の低分子RNA産生領域と劣性側の標的プロモーター領域の一部をシロイヌナズナに導入するだけでは、標的遺伝子の発現抑制は再現されないことが明らかとなった。低分子RNA産生と標的遺伝子発現の時期的関係、低分子RNA産生領域周辺のゲノム構造、標的遺伝子周辺のゲノム構造の重要性、未知の因子の関与など複数の要因が推察され、新しい未知の仕組みが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナ優劣性モデル実験系の確立を急ぐ。Osg6BプロモーターにSmi領域を連結したコンストラクトによる劣性S60-SP11プロモーター:GUSの発現抑制を確認する。系の確立に成功すれば、本Smi依存的なDNAメチル化と既知のDNAメチル化との相関を確認するため、既知のDNAメチル化関連因子のT-DNAタグラインを入手し、SmiによりGUS遺伝子の発現抑制が見られた形質転換体に随時交配していく予定である。
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