2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦後フランスにおける政治的なものと政治的主体の思想史-E・バリバールを軸として
Project/Area Number |
14J10355
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
太田 悠介 法政大学, 国際文化学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | エティエンヌ・バリバール / 大衆 / 政治的主体 / 移民 / 共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代フランスの哲学者E・バリバールの思想を参照軸として、戦後フランスにおける「政治的主体」論の思想的布置を提示することである。本年は以下の二点を検討した。 1. バリバールの思想的背景にはC・シュミットの思想があるが、マルクス主義哲学者として出発したバリバールとナチス・ドイツの桂冠法学者でもあったシュミットのあいだには、当然ながらイデオロギー的対立が存在する。しかし、20世紀末の共産主義崩壊を契機として、それとは異なる仕方で共同体を再考する現代共同体論が現れ、本研究はこの地平において両者の系譜関係を洗い出した。それによれば、いかなる政治的主体によって、どのような共同体がかたちづくられるのかという「政治的なもの」をめぐる問いかけを両者は共有する一方で、共同体の構成に先立って主体の同質性を前提とするシュミットにたいして、バリバールの共同体は異質性をうちに含んでおり、そのかぎりにおいて非内在的な共同体という逆説的な共同体であった。 2. 戦後フランスの政治的主体をめぐっては、70年代から旧仏領植民地の北アフリカからの移民とその後裔がフランス政治の舞台に登場する点、そしてバリバールが早くからこれを第一級の政治課題と捉えてきた点が注目される。移民をめぐっては近視眼的な議論がされることが多く、長期的な視野が不可欠であり、そうした意図からG・ノワリエル『フランスという坩堝』を共訳書として刊行した。今年は奇しくもフランスで二度の襲撃事件が発生し、その背景として移民がクローズ・アップされたが、本研究はフランスと親世代の出身国のあいだで揺れ、根無し草的性格をもつという移民第二世代に共通の経験を考察した。 以上のように、本年度はバリバールとシュミットの系譜関係とフランス移民問題の考察という思想と社会のふたつの方向から、政治的主体の解明という総合課題に取り組んだ。
|
Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Remarks |
社会思想史学会第40回全国大会でセッションを開催し、その報告書を学会ホームページに掲載した。
|
Research Products
(6 results)