2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規超原子価ヨウ素(V)触媒の設計及びそれを用いる高選択的酸化反応の開発
Project/Area Number |
14J10428
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
六鹿 達矢 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 超原子価ヨウ素触媒 / オキソン / フェノール / 1,2-キノール / 酸化的脱芳香族化反応 / 位置選択的酸化反応 / 合成的応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
5価の超原子価ヨウ素化合物である2-ヨードキシ安息香酸(IBX)は重金属酸化剤や遷移金属触媒の代替酸化剤としてこれまで多くの酸化反応に用いられてきた。しかし、IBXは溶解性が悪く、また爆発性を有するなどの課題が残されている。これに対し、当研究室では触媒量の2-ヨードベンゼンスルホン酸塩(pre-IBS)とOxoneからin situで調整される5価の2-ヨードキシベンゼンスルホン酸(IBS)を酸化剤として用いるアルコールの高効率的及び高選択的酸化反応、並びにフェノールのオルト位選択的酸化反応による1,2-キノンの効率的合成法の開発にそれぞれ成功している。これまでに、本触媒システムは工業化に成功していおり、非常に価値の高い酸化反応システムである。 26年度の研究では、フェノールのオルト位選択的酸化反応による1,2-キノールの合成法の開発を行い、基質のオルトベンジル位にシリル基を導入することで、位置選択性を大きく向上させることに成功した。そこで、27年度の研究では、シリル基置換フェノールの酸化反応における基質適用範囲の拡大、及びシリル基の誘導を目指して研究を行った。基質適用範囲の検討では、フェノールの4位に置換基を有する基質において、生成物の1,2-キノールが二量化しにくく、系中の酸性度によって生成物からオルトキノンメチドが発生すること初めて突き止めた。オルトキノンメチドを有効利用した付加環化反応によってクロマン骨格の合成にも初めて成功した。一方、系中の酸性度を抑えることで、オルトキノンメチドの発生を抑制し、1,2-キノール誘導体を選択的に得ることにも成功した。シリル基の誘導では、シリル基の脱保護に限らず、オレフィン化や、続くエポキシ化によって有用な骨格への誘導も達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在の研究目的は超原子価ヨウ素(V)触媒を用いる高選択的な酸化反応の開発である。 本研究員は、当研究室で開発されたIBS/Oxone触媒システムを用いてフェノールの酸化反応による1,2-キノールの効率的合成に成功した。この過程で、ベンジル位にシリル基を導入することでより位置選択性が向上することを新たに見出し、従来にない高選択的な酸化反応の開発を達成することができた。また、シリル基を有効活用することで、研究開始当初では予期していなかった様々な有用骨格の合成にも適用することが可能となった。この新発見は、当初予定していた不斉合成への展開にも活かすことのできる重要な知見であると言え、当初の研究計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた知見を活かして、新たな高選択的酸化反応の開発を目指す。 具体的には、シリル基をキラル補助基として利用した立体選択的酸化反応への応用や、嵩高い補助基などを導入することで、通常酸化されにくい側への酸化を可能にする異常選択的酸化反応の開発を目指す。同時に、新規超原子価ヨウ素(V)触媒として当初予定していたリンオキシドを有するヨウ素触媒(IBP触媒)の設計を行う。IBP系触媒は活性種が安定で取り扱いやすいため、X線構造解析を行い、活性種の構造解析並びに反応メカニズムの考察を行う。 得られた知見を活かしたIBP系触媒の精密設計により、新たな高位置選択的酸化反応や不斉酸化反応への展開を目指す。
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Research Products
(3 results)