2015 Fiscal Year Annual Research Report
時間反転対称性の破れによる電気双極子モーメントの研究
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14J10429
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
照屋 絵理 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 電気双極子モーメント / シッフモーメント / 殻模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では(ⅰ)原子核構造の解析を行い、得られた原子核の波動関数を用いて(ⅱ)シッフモーメントの計算を行った。 (ⅰ)原子核構造の解析:本研究の目的は質量数200領域(Pb, Bi, Po, At, Rn, Fr アイソトープ)の原子核構造を解析し、それらの系統的な性質と個々の原子核の構造を明らかにすることである。原子核を記述する模型として核子を微視的に扱う殻模型を用いた。原子核の性質を表す電磁遷移確率やモーメントを計算し、実験値との比較を行った。またこの領域に多く存在する、ナノ秒以上の半減期をもつ原子核の励起状態であるアイソマー状態に対する解析を行った。その結果アイソマー状態ごとで、粒子の整列の影響や粒子の組む配位の差異など様々な理由が重なりアイソマーになっていることが分かった。さらに新しい相互作用の必要性や1粒子エネルギーの粒子数依存性などに関して議論を行った。 (ⅱ)シッフモーメントの計算: 粒子の電荷分布の偏りを表す電気双極子モーメント(EDM)は時間反転(T)対称性を破る物理量であり、EDMの存在はT対称性の破れを意味する。中性原子の電気双極子モーメントを与えるモーメントが原子核のシッフモーメントである。本研究の目的は原子核のシッフモーメントを数値計算し、原子のEDMを見積もることである。本年度はXeアイソトープに対してシッフモーメントの計算を行った。さらに計算したシッフモーメントと、素粒子の標準模型から導かれるT対称性の破れの強さを用いて129Xe原子のEDMの大きさを見積もった。その結果、現在の実験の精度では観測不可能な小さな値が得られた。また計算したシッフモーメントと、129Xe原子、199Hg原子、TlF分子のEDMの実験の上限値を用いT対称性の破れの強さの上限値を見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は質量数200領域の原子核の構造と性質を系統的に解析すること、またエネルギー準位および電磁遷移を良く再現する波動関数を用いてシッフモーメントを計算する事であった。質量数200領域の解析に関して、個々の原子核の実験値をよく再現する有効相互作用の設定・改良を行った。また得られた波動関数を用い、原子核の性質を表す電磁遷移確率やモーメントの計算を行った。さらに個々の原子核において特徴的な状態に関しては個別に詳細な解析を行った。これらの解析は本年度の解析予定であった原子核(およそ30核種)において終了し、この結果をまとめた論文を投稿した。一方、シッフモーメントの計算に関して本年度は計算のフレームワークの定式化を行い、それに基づき計算コードの作成を行った。この研究成果は国内外のいくつかの国際会議で発表した。また現在論文を執筆中である。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度とは異なる質量領域の原子核の解析を行う予定である。特に225Rn(質量数220)領域の解析を行う予定である。この領域の原子核は大きく八重極変形をしていることが知られており、原子核の構造を知る上でも興味のある領域である。まず対象領域の実験を系統的に再現する原子核の波動関数を求める。得られた波動関数を用い、電磁遷移確率や各種モーメントを計算し、実験との比較・検証を行う。また特徴的な原子核や原子核の状態に関しては個別の解析を行う。以上の解析から対象原子核領域の系統的な構造の解明を目指す。次に得られた波動関数を用い、原子核のシッフモーメントの数値計算を行う。フレームワークは本年度作成したものを用いる。必要な点があれば、適宜計算プログラムの改良を行う。得られた原子核のシッフモーメントを用いて原子の電気双極子モーメントを見積もり、実験において測定可能な大きな値を持つ可能性のある原子を特定する。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] Schiff moments of Xe isotopes2015
Author(s)
N. Yoshinaga, K. Higashiyama, and E. Teruya
Organizer
Computational Advances in Nuclear and Hadron Physics (CANHP 2015)
Place of Presentation
京都大学(京都府京都市)
Year and Date
2015-09-28 – 2015-10-02
Int'l Joint Research
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