2014 Fiscal Year Annual Research Report
フレキシブルディスプレイにむけた酸化物TFTの劣化特性の解明と高信頼性素子の開発
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14J10476
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山﨑 はるか 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化物半導体の高信頼性化 / 界面状態解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度情報化社会の発展に伴い、ディスプレイは重要な情報端末となってきている。ディスプレイの駆動素子にはTFTが用いられている。そのチャネル材料として非晶質In2O3-Ga2O3-ZnO (a-IGZO)には室温形成可能、高い電気性能、超低リーク電流や光透過性など、従来のSiにはないさまざまな魅力的性質があり注目されている。 しかし、a-IGZO-TFTは長期使用に対する信頼性が低く、物理的性質や劣化特性のメカニズムが未だ解明されていないという問題が指摘されている。過去の報告では絶縁膜中に含まれる水素がa-IGZOとの間に準位を作ることで劣化が起こるといわれてきたが、原料ガス中に水素が含まれるため絶縁膜中の水素量を減少させることは難しい。そこで本研究では原料ガスにSiF4とN2のみを用いることで、ゲート絶縁膜に含有される水素量を10分の1に低減する事を提案し、信頼性改善に成功した。今年度は、このゲート絶縁膜に含まれるフッ素の影響を明らかにする研究を行っている。印加電圧に対しTFTの特性劣化を誘引する元素やその挙動を元素の結合状態や拡散を測定することで、信頼性改善のメカニズムを提案し、より信頼性の高い素子の作製を可能にできると考えた。 20Vのゲート電圧印加ストレス試験の測定温度依存性(25℃・55℃)では絶縁膜にフッ素を含む場合、温度に対しても信頼性が高いという結果が得られた。また、界面におけるIn,Ga,Znの結合状態をX線解析装置(XPS)を用いて測定した。GaとZnではバルクと界面で結合状態の変化は見られなかった。一方、Inはバルクと比較し界面の結合状態のほうが約1eV高エネルギー側にシフトしており、In-FやIn-OFの結合をもつことが分かった。このことから、絶縁膜中のフッ素はIGZOチャネル層との界面においてInと結合をもち、信頼性を改善していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ゲート絶縁膜に含まれるフッ素の影響を明らかにする研究を行っている。印加電圧に対しTFTの特性劣化を誘引する元素やその挙動を元素の結合状態や拡散を測定することで、信頼性改善のメカニズムを提案し、より信頼性の高い素子の作製を可能にできると考えた。 20Vのゲート電圧印加ストレス試験の測定温度依存性(25℃・55℃)では絶縁膜にフッ素を含む場合、温度に対しても信頼性が高いという結果が得られた。また、界面におけるIn,Ga,Znの結合状態をX線解析装置(XPS)を用いて測定した。GaとZnではバルクと界面で結合状態の変化は見られなかった。一方、Inはバルクと比較し界面の結合状態のほうが約1eV高エネルギー側にシフトしており、In-FやIn-OFの結合をもつことが分かった。このことから、絶縁膜中のフッ素はIGZOチャネル層との界面においてInと結合をもち、信頼性を改善していることが分かった。この結果を応用物理学会や国際学会で発表し、高い評価を得た。 年次計画では、今年度の目標に信頼性の測定、電気特性の評価、さらに結合状態の解析と、シミュレーションを用いた劣化原因の解析を進める予定であった。シミュレーションによる構造評価に関しては現在遂行中であるが、そのほかに関してはすべて明らかにすることができた。 現在、界面におけるフッ素の役割に関しての学術論文を執筆中であり、27年度初旬には投稿できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでに信頼性改善のメカニズムを電気的、化学的に明らかにすることを目的とし、研究を遂行してきた。これまでにa-IGZO-TFTについて、絶縁膜中のフッ素がIGZO中のInに影響を与えることにより高信頼性化が実現することが分かった。しかし、IGZO界面でのフッ素の電気的な挙動や、Inへの特異性がなぜ起こるのかということは明らかにできていない。そこでこれらの問題を解決するために今後は、化学結合状態の解析をシミュレーションを用いることにより行っていく。また、さらに詳細なメカニズムを明らかにするために、熱酸化SiO2膜上に極薄のSiN:F層を堆積したサンプルを用い、これまで明らかになってこなかった、絶縁膜バルクの現象と界面で起こる現象の切り分けを行う予定である。これらの内容で、今年度も学会発表や論文投稿を活発に行っていく予定である。 現在酸化物半導体を用いたTFTは高温でのアニール処理が、高い電気特性や信頼性を保持するための必須プロセスとなっている。アニール処理を低温化した際に、高い電気特性を保持するための研究は盛んにおこなわれてきたが、未だ信頼性の問題は解決していない。現在行っている、信頼性についてのメカニズム解明ができれば、高温でのアニールをしなくても高い信頼性を持つ酸化物半導体TFTを作製することができると考える。このことは、酸化物半導体を用いた透明フレキシブルディスプレイの実用化を大きく前進させる知見であると考える。
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Research Products
(3 results)