2014 Fiscal Year Annual Research Report
運動による代謝改善効果を模倣する新規代謝調節経路の分子機構解析
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14J10489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 崇 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 運動 / AMPK / GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
運動は生活習慣病予防に効果的である事はよく知られているが、そのメカニズムには不明な点が多く残されている。本研究では、運動時に起こる遺伝子発現変動を解析し、運動による代謝改善効果を担う新規経路を明らかにする事で、新たな生活習慣病予防法を示す事を目的とし、以下の2点について研究を遂行した。
1. AMPKによるPPARγmRNA安定化機構の解析 運動時に骨格筋において強く活性化するAMPKは、PPARγのmRNAを安定化する事でその発現量を増大させ、LPLの発現を調節する事を明らかにしているが、そのメカニズムは不明である。そこでAMPKによりリン酸化を受け、様々なmRNAの安定性に関わるHuRに着目して研究を進めたが、HuRがPPARγmRNAの安定化に関わるという証拠は得られなかった。今後は他のmRNA安定化因子に対象を拡張し、さらなる検証を行う予定である。 2. 運動により骨格筋で発現亢進するGタンパク質共役型受容体の発見と機能解析 トレッドミル走行運動を負荷したマウス骨格筋に解析により、運動後に発現が亢進するGタンパク質共役型受容体(GPCR)を発見した。更にこのGPCRのプロモーター領域を解析する事により、発現に関わる転写因子の同定に成功した。また当該GPCRを骨格筋特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作出したところ、骨格筋の肥大化と高脂肪食負荷に伴うインスリン抵抗性の改善が認められた。今回発見したGPCRは、運動による代謝改善効果を担う因子のひとつと予想され、生活習慣病の予防および治療に貢献する因子として応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AMPKの活性化によるPPARγmRNA安定化機構の解析は難航している。本年はHuRに着目して研究を進めたが、HuRとPPARγmRNA安定化の関連は見いだせなかった。しかしPPARγmRNAの安定化に寄与する可能性のある因子ついて着実に検証を進めており、一定の進展が認められている。一方、運動による代謝改善効果を担い得るGPCRを発見し、その機能に関して新たな知見が得られた点において、当初の予想を超える大きな進展が認められた。本年度の基礎研究データは、翌年度以降の研究の支柱になるものと考えている。総じて、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. PPARγmRNA安定化機構の解析 PPARγmRNAの安定化機構に関しては、本年度検討したHuR以外の因子も視野に入れて引き続き検討を行う。主にsiRNAを利用した、mRNA安定化因子のノックダウン実験を想定している。AMPKの活性化によるPPARγmRNAの安定化は脂肪細胞等では確認できなかったため、筋細胞に多く発現する因子を重点的に解析することにより、効率的に探索が可能であると考えている。
2. 運動により骨格筋で発現亢進するGタンパク質共役型受容体の発見と機能解析 新たに運動機能を模倣し得る因子として同定したGPCRに関しては、興味深いデータが多く得られているため、今後更に力を入れて研究を進める予定である。過去に筋肥大に関与するGPCRはいくつか報告されているが、筋肥大に至るメカニズムはGPCRによりさまざまであるため、分子レベルで詳細を明らかにしていきたい。また、これまで行ってきた分子生物学的基礎研究に加えて、応用的な研究も進めていきたいと考えている。具体的には、本GPCRの活性化により廃用性筋萎縮や加齢による筋萎縮を抑えられるか、という点を遺伝子改変マウスなどを用いて明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(1 results)