2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内共生に伴う偽遺伝子化のTG1門細菌を用いた解析
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14J10527
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊澤 和輝 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / 比較ゲノム解析 / ゲノム縮小 / 偽遺伝子 / 国際研究者交流 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムサイズの縮小は細胞内共生細菌の特徴の一つであるが、その詳細な過程については明らかになっていないことが多い。本研究で扱うTG1門細菌は、多様なシロアリ腸内原生生物細胞に共生しているが、各シロアリ腸内原生生物細胞に独立に共生したと考えられており、異なるゲノム縮小進化段階にある可能性が高い。加えて、数種のシロアリ腸内には細胞内共生型TG1門細菌の祖先種と考えられる自由生活型も存在することがわかっている。 本研究では、これら自由生活型、細胞共生型の各種TG1 門細菌について比較ゲノム解析を行うことで、細胞共生に伴うゲノム縮小進化の詳細な過程、特に遺伝子の偽遺伝子化の順序を解明することを目的とする。 平成26年度は当初の計画に沿って、比較ゲノム解析に必要な、シロアリ腸内原生生物の細胞内共生型のTG1門細菌および、シロアリ腸内自由生活型のTG1門細菌のドラフトゲノム配列の取得を目指した。細胞内共生型TG1門細菌のゲノム配列取得のためには、マイクロマニピュレーターによる細胞分取法を用いた。この結果、新規の細胞内共生型TG1門細菌3種について、ドラフトゲノム配列の取得に成功した。現在PCRとサンガー法によるギャップクロージングを遂行しており、ゲノム完全長配列の取得を目指している。今回得られたゲノム配列はいずれもドラフト段階ではあるが、既にゲノム完全長が報告されているTG1門細菌Rs-D17との比較ゲノム解析の結果、偽遺伝子化した機能遺伝子の種類に相違があることが明らかとなった。この成果について2件の国内学会発表を行った。一方シロアリ腸内自由生活型TG1門細菌のゲノム配列取得のためには、蛍光セルソーターを用いた単離回収法を試みたが、自由生活型のTG1門細菌の回収には至っていない。そのため、次年度からは新たに培養による手法も試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロアリ腸内自由生活型のTG1門細菌についてはセルソーターを用いた細胞の回収が成功していないが、新たに培養による手法を試みようとしている。しかしながら、現所属研究室にはその技術がないため、ドイツ・マックスプランク研究所のAndreas Brune教授に3ヶ月間研究指導を委託し、現在培養技術を修得中である。 一方で、新規のTG1門細胞内共生細菌3種について、ドラフトゲノム配列の取得に成功している。 また、比較ゲノム解析も同時に進行しており、既にゲノム完全長が報告されているTG1門細菌Rs-D17との比較解析を行った結果、偽遺伝子化した機能遺伝子の種類に相違があることが既に明らかとなっている。 これらの結果から、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、修得した培養技術を用いて、シロアリ腸内自由生活型のTG1門細菌のゲノム配列取得を試みる。 また、マイクロマニピュレーターによる細胞分取法を用い、新たに1種の細胞内共生型TG1門細菌のゲノム配列取得も試みる。 さらに、現在得られているドラフトゲノム配列についてはギャップクロージングを完了し、ゲノム完全長を取得後、遺伝子のアノテーションを行う。 最後に、TG1門細菌間での比較ゲノム解析を行い細胞内共生に伴う偽遺伝子化の順序について議論し、その結果を国際誌に発表する。
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Research Products
(3 results)