2014 Fiscal Year Annual Research Report
パルス幅0.1ミリ秒の微弱パルス電流を特異的に認識する生体受容機構の存在の検証
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14J10549
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松山 真吾 熊本大学, 生命科学研究部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 微弱パルス電流0.1 / 微弱パルス電流0.1受容体 / TRPM7タンパク質 / 電気を用いた治療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 微弱パルス電流 0.1の生体受容機構の解明を目的とした. 特に, この機構に関与する候補分子として予備検討により見出した物理的刺激受容体TRPチャネルファミリーに属するTRPM7を想定した. TRPM7-siRNAまたはTRPM7特異的阻害剤処理を行った培養細胞では, 微弱パルス電流0.1によるAktの活性化が消失した. さらに, 微弱パルス電流0.1により活性化が確認できている他の分子に対しての効果も確認した. 線虫を用いて個体での作用を確認してみると, TRPM7 変異線虫では, AMPK (「微弱パルス電流0.1はLKB1-AMPK経路を活性化したストレス耐性付与効果および脂肪蓄積抑制効果を示す」という内容でPLOS ONEに受理)の活性化が抑制されることを確認し, TRPM7が微弱パルス電流0.1の受容体として機能する可能性を深めた. また, TRPM7の機能と微弱パルス電流0.1の効果の関連性について検討した. TRPM7は生体においてマグネシウムや亜鉛のイオンチャネルとして機能し, また, 物理的刺激受容体のなかで唯一キナーゼドメインを有する希有な存在である. そこで, 微弱パルス電流0.1が細胞内のマグネシウムや亜鉛の動態に影響を与えているか否か検討を実施した. 微弱パルス電流0.1処理後, 細胞内の両金属イオンの濃度を測定したところ, 未処置群と比較し明確な差は無かった. 今後, TRPM7のキナーゼドメイン欠損変異体(ΔKD-TRPM7)を作製し, キナーゼとしての活性の影響を評価していく予定である. 本研究は, 外部からの電流刺激に対する生体応答に, 受容体という概念を初めて提起しうる知見であり, 立証することができれば生物学的なインパクトは大きいことが予想される. また, 米国でNIHや製薬会社が中心となって電流を用いた治療法の開発に取り組んでいる背景(Electroceuticalsという概念)から, 疾患治療法における新時代開拓をサポートする知見になりうる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初, 評価系として用いる予定だった培養細胞株に加え, 線虫を用いた個体での評価においても, 本研究課題の検証を行うことができ, 仮説をサポートする結果が得られている. また, 早期の段階で実験系の改善点としてCRISPR/Cas9システムの導入に踏み切ったことで今度もよりスムーズな研究展開ができるものと確信している.
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Strategy for Future Research Activity |
siRNA-TRPM7 の効果を検証してきたが, TRPM7 の安定性が高くターンノーバーが比較的遅いために, TRPM7のタンパク質発現量を安定的に減少させることに困難が生じるのが課題であった. そこで, さらに本研究を推進するにあたり別の方法で TRPM7 の影響を評価する必要性が生じた. その解決方法の一つとして, TRPM7 過剰発現細胞および TRPM7 ノックアウト細胞の作製を考えている. 過剰発現細胞については既にプラスミドを準備できており, 現在検討を進めている. ノックアウト細胞については, 昨年からゲノム編集技術として脚光を浴びる CRISPR/Cas9 システムの導入を予定している. こちらについてもAddgene社からCRISPR/Cas9 all in one plasmid を既に購入しており, gRNA 設計およびサブクローニングを終えており, 今後TRPM7ノックアウト細胞を樹立していく予定である.
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Research Products
(2 results)