2014 Fiscal Year Annual Research Report
西欧初期近代における自然探求と「宗教」-F・ベイコンを中心に-
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14J10589
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下野 葉月 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 科学と宗教 / 自然 / フランシス・ベイコン / 自然法則 / 知識論 / 自然神学 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
1)本年度は第一の課題として、研究計画の第一番目に挙げた「自然に潜む秩序と「法」の関係」について研究を実施した。具体的には、私がかつてより研究対象としているフランシス・ベイコン(1561-1626)の天文学に関わる思想を、『知的世界の記述』(1612)および『天界の理論』(1612)という二つの書物を通して分析し、ガリレオやケプラーと同時代人であるベイコン特有の着眼点と思想を浮彫りにした。天体や天界の物質的次元に注目し、物質に内在する力を普遍的にはたらくものとして想定したベイコンの先鋭性は、今後更なる脚光を浴びてもよいテーマであるように思える。当研究については、2014年5月の科学史学会総会にて口頭発表を行った。(「フランシス・ベイコンの天界論――永遠と自然――」) 2)本年度は、第二のテーマとして、フランシス・ベイコンによる自然の知をめぐる思想について研究した。これは研究計画の二番目に挙げた「自然支配の問題」と関連する。ベイコンは、近代的な自然科学の方法を樹立した人物と看做されており、ひいては、人間が自然を支配し、自らのために利用することを是とした倫理を築いた人物と考えられている。こうした理解に対し、ベイコンの思想の中で自然に関する知は、本源的には神に由来し、神によって人間に与えられたもの、言い換えれば人間に自然本性的にもたらされたものと想定されていた。つまり「知」という次元に立脚すると、ベイコンが想定していた自然の知とは、現在われわれが自然科学によって修得する知とは全く異なる性質のものであった。この研究内容については、部分的に2014年9月の日本宗教学会にて口頭発表を行った。(「フランシス・ベイコンの知をめぐる倫理の構築――自然探求のタブーとその克服――」)更にその内容を敷衍して、「フランシス・ベイコンの自然の知と人間性」という論文を執筆し、東京大学宗教学年報に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・計画書に提示した内容の研究が7割ほど遂行できたと考えている。論文を2本、書評2本を執筆し、学会発表は2回行った。しかしながら、1つ論文としてまとめていながらも、未だに投稿に至っていないものもあるため、予定通りの進展とはなっていない。 ・2014年9月に妊娠が確認されたため、9月から12月はつわり等妊娠初期に一般的な症状の影響を受けて、思うように研究がはかどらなかった。加えて、同じ理由により、年度内に予定していた海外(ロンドン)での短期研修や現地での調査を遂行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
・2015年6月に出産をひかえているため、2015年5月からは中断の措置を採る予定である。出産後、体調や育児との兼ね合いをみて、研究を再開して行く予定である。 ・具体的には、博士論文の執筆を中心に据えると同時に、学会誌への投稿や、学会や研究会での発表を継続して行う予定である。
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