2016 Fiscal Year Annual Research Report
西欧初期近代における自然探求と「宗教」-F・ベイコンを中心に-
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14J10589
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下野 葉月 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2018-03-31
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Keywords | ベイコン / 宗教改革 / 自然 / 近代 / 革新 / 改革 / イギリス / 万能細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は出産・育児による中断を経て10月に復帰したため、通常年度の半分、6ヶ月間が実働期間となる。 申請時に掲げた目的通り、これまでも研究してきたフランシス・ベイコン(1561-1626)の思想を「宗教」の視座の元で研究した。具体的には、ベイコンの思想の最大の特徴とも言える「革新」や「改革」への関心がいかに醸成されたかについて、彼の伝記や史実を元に分析した。結果として、ベイコンの自然探求における変革への熱意は、彼自身の「宗教改革」の経験に棹さされたものであることが判明した。ベイコンは、宗教(ユグノー)戦争の最中にあったフランスに滞在し駐仏大使の仕事を手伝った経験や、フランスにて外交・諜報活動をおこなていた兄アンソニーを支援した経験などから、また先鋭的なピューリタンであった母親の影響を受け、自らのプロテスタントとしてのアイデンティティーを自覚するに至った。親の世代に為された宗教改革が分離や紛争の絶えない世界をもたらしていることを身をもって知ったベイコンは、「改革」を希求する精神を受け継ぎながらも、争いをもたらす宗教ではなく新たな可能性に満ちた自然探求に未来への希望を託したのだと考えられる。 上記の研究内容は12月下旬に東京工業大学の科学史研究室にて開催されている火ゼミにて発表を行った。さらに同じ内容を論文にまとめ、「フランシス・ベイコンと改革の精神」という論文を東京大学宗教学年報に投稿した。 また上記の研究とは別に、万能細胞の作成における文化的要因について韓国と日本の事例を比較検討した論文、"Scientific Selves and Pluripotent Cells in South Korea and Japan"が今年出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究発表の機会を12月に頂いたため、それに向けて拍車をかけて研究を進めることができた。また今年になってからは同じ研究内容を精査して論文にまとめることに集中することができた。これまでは著作の分析を主にしてきたが、今回伝記や史実に重きを置いた研究を行ったため、これまでとは違う発見があり、博士論文にも資する論文が書けたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進め方は大幅には変わらないが、今後は海外の研究者との相談やアドバイザーからの指導なども仰ぎ、より広いオーディエンスを視野に入れた研究成果を残すよう英文で執筆・発表する機会を増やす予定である。同時にこれまで発表してきた学会に加えて他の学会にも参加し、研究の精度を高め、他の研究者との連携もはかりたい。
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