2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10611
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大杉 尚之 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 視覚的注意 / 視覚探索 / 抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
非関連情報の抑制により,視覚処理の容量限界を巧妙に避けながら行動関連情報の処理が最適化される。しかし,注意が抑制された位置では大きな視覚変化に対する見落としが起こりやすくなる。本研究の目的は注意が抑制された位置で視覚信号の増幅機能と雑音の除去機能のどちらが不全になるかを検討することであった。今年度実施した主な研究活動は以下の通りである。
(1)予測に基づく抑制プロセスが背景雑音の開始により消失することを明らかにした。昨年度までに,予測に基づく抑制現象(視覚的印付け)に関して,注意が抑制された位置で雑音の除去機能が不全になることを明らかにしていた。本年度では,雑音刺激の提示方法を様々に変え,視覚的印付けに及ぼす影響を検討した。静的な雑音刺激,定常的な動的雑音では,雑音が及ぼす影響に違いは無かった。一方,静的雑音を動的雑音に変化させた場合には視覚的印付けが消失した。以上より,雑音が視覚的印付けに及ぼす影響は一定ではないことが明らかとなった。すなわち,1) 定常的な動的雑音刺激は抑制プロセスには影響しないが雑音除去機能を不全にする事,2)雑音の動的変化の開始は抑制プロセスそのものを不全にする事が示された。これらのデータをまとめた論文をVision Research 誌に投稿し,受理された。
(2)履歴に基づく抑制プロセスが信号を検出する際のサンプリング率の低下を引き起こすことを明らかにした。視覚系における雑音除去機能の不全の原因の一つに,信号を検出する際のサンプリング率の低下があげられる。実験の結果,注意が抑制された位置(復帰の抑制が生じた位置)に提示された視覚刺激はサンプリング率が低下し,主観的な持続時間が短縮することが明らかとなった。このことから履歴に基づく抑制も雑音除去機能の不全を引き起こすことが示された。現在これらのデータをまとめ論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、順調に実験結果を得る事が出来ている。また、Vision Research 誌に掲載されることが確定した。未発表の研究に関しても,国際学会への発表や論文作成なども進んでおり、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度得られた結果を論文にまとめ国際誌に投稿する。計画書に記載した2年次の研究計画を実施する。
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