2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳内にmRNAを送達する高分子ミセルの創製と脳神経系難病の標的治療への展開
Project/Area Number |
14J10621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
末吉 大輝 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / バイオマテリアル / ポリイオンコンプレックス / タンパク質デリバリー / ナノリアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1.脳神経系細胞への精密な標的指向化を可能とするミセルの構築、および2.生体内の流動環境下で機能するナノリアクターの構築および機能評価を行った。 1.では、ポリエチレングリコール(PEG)末端にマレイミド基を有するPEG-b-ポリアスパラギン酸を合成した。これにより、ポリカチオンとの間でミセルを形成後、その表層に種々のリガンドを搭載し、脳神経系、特に脳実質内における精密な標的指向性を有するミセルの構築が可能となった。 2.では、細胞質において持続的なタンパク質発現を可能とするmRNA内包キャリアに対し、外来の酵素を直接目的部位において機能させるナノキャリアを開発した。脳神経系疾患を含む種々の疾患においては、生体内における代謝異常や異常タンパクの蓄積等がその発生機序に関わっているものが多い。そこで、生体内の流動環境下において疾患関連分子の除去を行うナノリアクターを指向し、L-アスパラギナーゼ(L-ASP)封入ポリイオンコンプレックス(PIC)型ベシクル(PICsome)を構築した。動的光散乱測定および透過電子顕微鏡観察により、粒径約100 nmの単分散なベシクル構造の形成を確認し、蛍光標識化L-ASPを用いた蛍光相関分光法による解析からベシクル内へのL-ASPの封入を確認した。in vitroでの評価の結果、PICsomeへの封入後もL-ASPは活性が維持され、かつ擬似生理環境下においても失活が見られなかった。in vivoでの評価の結果、PICsome封入型L-ASPはフリーのL-ASPに比べマウスにおいて著しく高い血中循環性を示し、さらに、酵素反応に起因して血漿中の濃度が変化しうる化学成分の分析の結果、より持続した酵素反応が確認された。以上より、長期にわたって血流中で機能するPIC型ナノリアクターの開発にはじめて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、実施計画に挙げた脳神経系細胞標的化のためのリガンド搭載ミセルの構築に加え、目的の酵素を血流中で持続的に機能させることが可能な新規プラットフォームの構築に成功した。後者については当初の計画には無かったが、脳神経系疾患に対する新たな治療戦略に寄与する可能性を秘めており、総じて計画以上に進展していると言ってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は酵素封入PICsomeの生体内流動環境下における機能評価を中心とし、その有用性について更なる検討を行う予定である。
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