2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10624
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柏 達己 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 古代ギリシア / アテナイ / 公職者 / エイサンゲリア / 公職者顕彰 / ヒュペレイデス / アルキメデス・パリンプセスト |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、研究対象であるアテナイ公職者制度に関し、前年度に引き続いて司法的側面について分析を進めるとともに、古典期(前5-4世紀)からヘレニズム期(本年度は前2世紀まで)にかけての公職者顕彰、および財政制度に関し研究を行った。用いた史料としては、伝アリストテレス『アテナイ人の国制』、法廷弁論、喜劇、プルタルコス『対比列伝』といった文献史料に加え、特に顕彰や財政については、決議碑文や公職者会計文書といった碑文史料が挙げられる。さらに、合わせて関連する英・独・仏の研究文献を参照した。 また、近年いわゆる「アルキメデス・パリンプセスト」の解読によって発見され、本研究とも深い関わりをもつ弁論家ヒュペレイデスの新断片についても研究を行った。その成果の一部として、同断片のイントロダクション・日本語訳注を執筆(共著)し、2016年5月に公刊されることとなった。これは、新断片はもとより、従来知られていた作品を含め、ヒュペレイデスの弁論についての初の日本語訳である。 さらに、2015年8-9月には、イギリス・オックスフォード大学およびギリシア・アテネに滞在した。前者では日本では入手困難な文献の閲覧・収集を行うとともに、同大学の研究者と面会し、自身の研究について有益な助言を得ることができた。後者においては、現地で碑文をはじめとする考古学的史料について実見調査を行った。また、京都大学において開催された碑文学の研究会に出席し、碑文学についての知見を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究対象を広げ、前年度に比して特に碑文史料の分析を進めることができた。また夏期のイギリス・ギリシアでの研究調査の折には、文献収集や碑文の実見調査などを予定通り進めることができた。研究成果の公刊に関しても、ヒュペレイデス新断片の翻訳(共著)が公刊される運びとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26-27年度は、特にアテナイ公職者の司法・財政・顕彰といった側面に焦点を当て、特に古典期からヘレニズム期にかけての時代を研究してきたため、28年度は公職者制度の他の側面まで研究対象を広げ、時代的にもアルカイック期までを含めていきたいと考えている。さらに、26年度に行った学会報告を基にした論文については、27年度中の投稿に至らなかったため、28年度中の公刊を目指していきたい。 また、26-27年度におこなった海外での研究調査についても、継続して行っていきたい。
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Research Products
(1 results)