2014 Fiscal Year Annual Research Report
医療経済評価による制度設計の可能性と各アクターの意思決定分析
Project/Area Number |
14J10648
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
能登 康之介 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 医療用医薬品 / 薬価基準制度 / 流通システム / 取引慣行 / シミュレーション分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,現行の薬価制度の課題として,医薬品流通市場における取引慣行問題を扱ってきた.医薬品流通市場に存在する各取引慣行(製薬企業のリベート・アローアンス(R・A),卸と医療機関間の総価取引と未妥結仮納入取引)は,薬価の基準となる流通価格を不透明にし,薬価基準制度の信頼性を損なわせるとして,長年,問題視されてきた. 本年度の研究では,1)医薬品流通市場で取引慣行がなぜ形成されるか,2)各取引慣行が薬価にどのように,どの程度影響を与えているのかを検討した. まず,1)の取引慣行の形成メカニズムについて,「医療用医薬品の取引慣行問題形成メカニズムの分析」を2014年6月の公共政策学会の研究大会にて報告した.ここでは各取引慣行が薬価基準制度の規定する価格交渉におけるインセンティブ構造にもとづいて形成されている可能性を実証的に分析した.この報告に試行的な薬価制度である新薬創出加算の分析を追加した"An Economic Analysis of Trade Practices in Japanese Pharmaceutical Distribution System”を2014年11月のInternational Conference of Japan Economic Policy Associationにて報告した. 次に,2)の検討課題について,「医療用医薬品流通における取引慣行に関する研究-薬価シミュレーションによる問題の定量化-」(印南一路 慶應大学教授との共同研究)を2015年3月に行われた医療経済学会若手研究者育成のためのセミナーにて報告を行った.本研究では,業界集計データに基づき,取引慣行が存在する医薬品市場をモデル化し,長期の薬価推移シミュレーションを行った.各取引慣行が薬価に持つ影響について定量的に示し,政策的インプリケーションについての考察も行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,現行の医薬品価格制度に関する課題として,医薬品流通市場における取引慣行に関する問題を中心的に扱ってきた.取引慣行問題の政策課題としての重要性から,研究実施計画からは若干の修正を行い,本問題の「問題性に関する定量化分析」を検討課題として追加した.学会報告,学内での報告等のタイミングで作業が進み,おおむね予定通りに進捗した. 本年度行った研究は薬価制度が医薬品産業に与えている影響を経済モデルを用いたシミュレーション分析により定量化している点で,研究課題の予備的研究に位置付けられ,今後の研究を進めるにあたり基礎的な知見となる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度行った研究では,主に業界集計レベルのデータを使用した.今後はより詳細な議論を行うために個別の薬価データと流通取引に関するマイクロデータを使用する.また医療経済評価の日本の薬価制度への応用可能性についても,これまでの研究で明らかになった知見(薬価制度が産業各主体に与える影響等)を応用しながら進める.
|
Research Products
(3 results)