2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゴシック建築における壁の厚みと壁内通路に関する様式論的研究
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14J10678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋崎 礼 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ゴシック建築 / ロマネスク建築 / 壁内通路 / 組積造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゴシック建築の壁内通路(壁の厚みの中の通路、トリフォリウム)に特に着目した上で、それを構築という観点から様式的に捉えなおすことを目的としている。三年計画の二年目に当たる本年度は、初年度に得られた成果を国内外で発表すると共に、フランス・パリに長期滞在して現地調査を重ねた。この調査は次年度も継続していく方針である。 具体的に行った作業は主に以下の内容からなる。 1.前年度の事前調査に基づき、フランスのゴシック建築の壁内通路の実地調査を実施した。主に、壁内通路の寸法の実測、天井部と床面の石積みの詳細の観察、足場固定の穴等壁内通路が建設に活用された痕跡の記録を行った。壁内通路が途中で中断されている例や建設後に屋根裏と建物内部を隔てる壁を建設した例を見出し、それを間近で確認することによって、壁内通路の構造的限界に関する示唆を得ることができた。 2.パリ郊外の建築文化財資料館において、フランスで近現代に行われたゴシック建築の修復に関する資料の調査を行った。とりわけ図面資料には修復時のスケッチや壁内通路の階を示した平面図が含まれていることがあり、それらは壁内通路の構造を理解するのに有益であった。 3.ゴシック期に顕著に見られる部材の一体構築の傾向に関して整理し、滞在中のパリ国際大学都市において発表を行った。部材の一体構築は柱頭の省略によるアーチと柱の一体化等、意匠的な面で取り上げられることが多かった。しかし観察によればゴシック期には構築あるいは石積みの点からも一体構築への傾向が認められる。さらにこの構築手法は壁内通路の建設においても重要であり、本研究で検討を予定している様式と構築との密接性にも関係が深いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴシック建築の壁内通路の実地調査に関しては現地での立入許可申請に手間取っている面もあるものの、調査を遂行できたいくつかの事例からは建設技術に関する新たな示唆を得ており、今後の研究で発展が見込まれるため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度から実地調査による壁内通路の具体的な建設技術の研究を始めている。次年度は引き続き実地調査を進めると同時に、学術雑誌への投稿や国内外での研究発表を通じて、得られた成果をまとめていく予定である。
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Research Products
(4 results)