2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J10744
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石塚 政行 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | バスク語 / ヴォイス / 類型論 / コピュラ文 / 自動詞化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、フランスのバスク語話者の協力のもと調査を行い、以下の成果を得た。 まず、バスク語の重要なヴォイス現象の一つとして、「自動詞化」について調べた。バスク語における自動詞化とは、他動詞の結合価を減らして自動詞を派生する文法的プロセスである。自動詞化によって、能格項が消え、2項動詞は1項動詞に、3項動詞は2項動詞になる。 自動詞化によって表現される主な意味は、「動作主の背景化」「再帰」「相互」である。これらの意味は、自動詞化によらず、他動詞によって表現することも可能である。今年度の調査では、これらの意味が自動詞化で表現される場合と、他動詞で表現される場合でどのような違いがあるのかを調べた。「動作主の背景化」については、自動詞化の場合の方が強く能格項が抑制されること、「再帰」については、他動性が高すぎたり低すぎたりする場合には自動詞化が行われないことが明らかになった。「相互」については明確な相違点を見つけることはできなかった。 また、「逆受動化」(他動詞の主語と目的語を、それぞれ自動詞の主語と斜格語に変えるプロセス)を実現する方法の一つとして、コピュラ文の補語について調査、考察した。バスク語のコピュラ文には2種類が存在するが、それを類型論的に位置づけるために、コピュラ文の補語が二次述語としても用いられることに注目した。結論としては、2種類のコピュラ文のうち一方の補語は名詞句、他方の補語は副詞句として捉えられるという仮説を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において調査項目としていたヴォイス現象のうち、「自動詞化」および「逆受動化」について詳しい調査を行うことができた。特に、自動詞化については「動作主の背景化」と「再帰」の意味について、他の表現手段との対比を明らかにすることができた。 また、逆受動化をヴォイス現象の中に位置づけるための前提となる議論として、コピュラ文について類型論的な位置づけを明確にすることができた。 一方で、自動詞化の表す意味のうち「相互」については、他動詞で表される相互文との違いを確かめられなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まだ調べられていないヴォイス現象、特に結合価を増やす「使役」「与格構文」について調査する。「使役」については使役接辞を用いるものと、使役動詞を用いるものの違いを中心に調べる。「与格構文」については、それが表せる意味の範囲を確定することを目標とする。 また、自動詞化のうち「相互」の意味について、さらに詳しい調査を行い、他動詞で表される相互文との違いを明らかにする。
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Research Products
(3 results)