2014 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴を用いた量子ドット太陽電池の高効率化
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14J10747
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川脇 徳久 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | プラズモン / 量子ドット / 太陽電池 / 増強 / 金属ナノ粒子 / 酸化亜鉛 / ナノワイヤ / 銀ナノキューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を示す金属ナノ粒子を用いて量子ドット(QD)太陽電池を高効率化することを目的とした。 ナノワイヤ(NW)構造を持ったZnOとp型特性を持つPbS QDを積層したヘテロ接合量子ドット太陽電池に、比較的強い局在電場や散乱光を示す銀ナノキューブ(Ag NC)を導入し、NCの位置や量を最適化した。具体的には、FTO被覆ガラス上でZnO NWを成長させ、QD分散液を数回スピンコートした後に一辺の長さ80 nm程度の立方体型のAg NC分散液をキャスト・乾燥し、さらにQD層を数回コートした。これにAu薄膜を蒸着し、各種光電変換特性を調べた。 光電変換特性のNC導入位置に対する依存性について検討したところ、NCの導入位置を入射光側から遠くしていくと、QDによって吸収できなかった光をNCがQDに伝える効果などにより、エネルギー変換効率(PCE)が向上した。さらに、NCの位置がAu対極に近づきすぎると光電流増強が減衰することから、NCに最適な導入位置があることがわかった。また、NC導入量依存性を検討した結果、NCの総断面積がセル面積の2.4%のときに最大となり、さらに導入量を増やすと、NCが電子-正孔の再結合中心となることなどによって、増強係数が減衰することがわかった。擬似太陽光照射下でのエネルギー変換効率は、NCがない場合の約1.3倍となり、最大で6.03%の変換効率が得られ、NP導入位置や量に最適値があることを初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、比較的高い効率や耐久性を持つヘテロ接合型の固体量子ドット太陽電池を作製し、銀ナノキューブを導入して、その効率の増強効果を観測した。 まず、量子ドット太陽電池の作製方法を確立した。ナノワイヤ(NW)構造を持ったZnOを利用すると、キャリアの拡散距離を抑制しながら、量子ドット(QD)層を厚くできるため、光電流を大幅に向上できる。FTO導電性ガラス上にZnO種結晶層をスピンコート法によって導入し、水熱合成法によって NWを成長させることに成功した。さらに、リガンド置換法によって、化学合成したPbS QDを膜状に積層させることにも成功した。その上に、対極としてAuをスパッタリングして、光を照射して量子ドット太陽電池として機能することを確認し、最大で4.5パーセントの効率を得ることができた。また、液相合成法によって、比較的強い散乱と局在電場を示す銀ナノキューブ(NC)の作製に成功した。さらに、NC導入によって比較的高い効率を示す量子ドット太陽電池においても、金属ナノ粒子による増強効果が有用であることを明らかにし、概ね研究計画を達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
より長波長域の近赤外域でLSPRを示し、また安価な硫化銅ナノ粒子を用いて、さらなる量子ドット太陽電池の効率向上を目指す。 銀ナノキューブは、強い散乱や局在電場を示すが、LSPR波長が主には可視光領域にある。そのため、量子ドットの光吸収が弱いより長波長域の近赤外域にLSPRピークを持つようなナノ粒子を用いれば、更なる効率向上に繋がる。近赤外領域にLSPRを示すナノ粒子には、ITOや酸化タングステン、硫化銅などがある。硫化銅ナノ粒子は、レアメタルを用いないという利点を持ち、比較的弱い保護層を持つような粒子の合成法が確立されている。そこで液相合成した硫化銅ナノ粒子を、リガンド置換法によってZnO NWを用いたQD太陽電池に導入し、エネルギー変換効率の向上が可能か検討する。さらに、光電流増強が最大となる構造(NP-NP間距離、QDの保護剤、QDサイズなど)を調べて、量子ドット太陽電池の現在の最高効率である8.6%以上の達成を目指す。
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Research Products
(8 results)