2014 Fiscal Year Annual Research Report
異種元素終端グラフェンナノリボンの合成と電子物性の解明
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14J10748
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤原 美帆 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | グラフェン / ジグザグ端 / へき開 / 化学気相成長法 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンは原子一つ分の厚みをもつ炭素シートで、優れた機械的・電気的特性をもつ。特に、グラフェンの端は、端構造に依存した特異な電気的および磁気的性質を示すため、大きな関心を集めている。端構造には、ジグザグ端とアームチェア端の二種類が存在し、これらの選択的な作製が困難であることが実験的な研究における課題となっている。本研究では、水素エッチングにより端構造の制御されたグラフェンナノリボンを作製し、端の物性を実験的に明らかにすることを目的とした。一方で、グラフェンの合成実験の過程で、試料冷却中にジグザグ端を選択的にもつ亀裂が生成するという興味深い結果が得られたため、本年度は、このような亀裂の構造評価および生成機構の解明を行った。 グラフェンは化学気相成長法により、銅箔上に成長させた後、室温まで冷却した。光学顕微鏡観察から、亀裂は60度進行方向を変えながら、結晶方位選択的に伝播することが明らかとなった。グレイン端からの角度および低エネルギー電子線回折パターン測定から、亀裂はジグザグ端方向に選択的に進行することが確認された。これらの結果は、グラフェン冷却中に、特定の結晶面に沿った亀裂が生じ、ジグザグ端が選択的に生成することを示している。ラマン分光測定による端の結晶性の評価から、亀裂部分のジグザグ端は、化学的に作製されたグレイン端よりも高結晶性であることが示唆された。また、統計的な光学顕微鏡観察から、亀裂の生成は、一軸の応力がグラフェンのV字型の切れ込みに集中に起因していると考えられる。 原子分解能での端構造の評価が未だ課題であるものの、本手法では清浄かつ構造制御されたグラフェン端を簡便に作製でき、今後のジグザグ端の物性研究の足掛かりとなると言える。また、遷移金属カルコゲナイドなどに代表される他の二次元物質へも応用可能であり、それらの物性研究においても有用な知見を与えることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画とは異なる方法ではあるが、「グラフェンを銅箔上に高温下で合成し、室温まで冷却する」という全く新しい手法によって、ジグザグ端の選択的な作製に成功しており、予想以上の成果が得られていると言える。 また、原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡による端の観察だけでなく、ラマン分光法という光学的な手法によっても、端構造の評価・議論ができており、順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、グレイン端からの角度や低エネルギー電子線回折パターン測定により、マクロスコピックな端構造は評価できているものの、原子レベルでの端構造の評価は未だ課題となっている。今後は、透過型電子顕微鏡および走査型トンネル顕微鏡観察により、原子分解能でのグラフェン端の構造評価を行う。 また、グラフェンの端の物性は、終端元素によっても変調することが理論的に予測されており、化学気相成長法を用いて、亀裂部分に六方晶窒化ホウ素を成長させ、異種元素により終端されたグラフェン端を作製し、評価を行う。
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