2014 Fiscal Year Annual Research Report
雑食者トゲマダラカゲロウ属の体色斑による隠蔽効果と渓流食物網における役割の解明
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14J10780
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田村 繁明 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 河川 / 水生昆虫 / カゲロウ / 隠蔽色 |
Outline of Annual Research Achievements |
【1】河床の色特性(河床地質)とトゲマダラカゲロウ属の色斑の関係に関する研究:北海道富良野市,栃木県日光市,東京都檜原村,山梨県道志村,愛知県瀬戸市・犬山市の河川における調査の結果,オオマダラカゲロウ,ミツトゲマダラカゲロウ,ヨシノマダラカゲロウでは明色の河床の河川では明色の体色斑型の個体が,暗色の河床の河川では暗色の体色斑型の個体が多いという河床の色特性(河床地質)と体色斑変異の間に統計的に有意な対応関係が認められ,フタマタマダラカゲロウ,未記載種では認められなかった. 【2】トゲマダラカゲロウ属の色斑の捕食者と餌動物に対する隠蔽効果に関する研究:トゲマダラカゲロウ属の食性について,トゲマダラカゲロウ属の消化管内容物分析から,コカゲロウ属幼虫が餌動物の約80%を占めており,オオマダラカゲロウ,ミツトゲマダラカゲロウ,ヨシノマダラカゲロウは肉食傾向が強く,他の2種は肉食傾向が弱いことが明らかになった.魚類捕食者(ハナカジカ)の食性について,消化管内容物調査によって,ハナカジカがトゲマダラカゲロウ属幼虫を摂食していることが明らかになった.魚類捕食者と餌動物に対する隠蔽効果について,ハナカジカ(魚類捕食者)に対する隠蔽効果に関する野外実験と,コカゲロウ属(餌動物)に対する隠蔽効果に関する室内実験について実験方法を確立することができた. 【3】体色斑変異の維持機構に関する研究:色斑の可塑性に関する室内実験について実験方法を確立することができた.色斑型の遺伝的分化・個体群間の遺伝子流動について,北海道富良野市,栃木県日光市,東京都檜原村,山梨県道志村,愛知県瀬戸市・犬山市において採集されたトゲマダラカゲロウ属4種(オオマダラカゲロウ,ミツトゲマダラカゲロウ,フタマタマダラカゲロウ,ヨシノマダラカゲロウ)のサンプルのミトコンドリア遺伝子CO1領域の塩基配列を決定することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画に従って,野外調査(河床の色特性とトゲマダラカゲロウ属の色斑の関係,トゲマダラカゲロウ属の食性,魚類捕食者の食性,色斑型の遺伝的分化・個体群間の遺伝子流動について)及び野外と室内における予備実験(魚類捕食者と餌動物に対する隠蔽効果,色斑の可塑性について)を行った.野外調査では,明色の河床の河川では明色の体色斑型の個体が多くなるという対応関係が認められる種と認められない種がいること,トゲマダラカゲロウ属の肉食の程度に種間で差があること,魚類捕食者がトゲマダラカゲロウ属幼虫を捕食することを明らかにすることができた.予備実験では魚類捕食者と餌動物に対する隠蔽効果,色斑の可塑性についての実験場所の設定と実験方法を確立することができた.以上から,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
一部未終了の野外調査(魚類捕食者の食性,色斑型の遺伝的分化・個体群間の遺伝子流動)を続けるとともに,実験方法が確立できた諸実験(魚類捕食者と餌動物に対する隠蔽効果,色斑の可塑性について)を行う.
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