2014 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブの内部空間を利用したダイヤモンドナノワイヤーの創製とその評価
Project/Area Number |
14J10812
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中西 勇介 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 1次元ナノダイヤモンド / カーボンナノチューブ / ジアマンタン / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では新奇1次元ナノダイヤモンドを創製するため,カーボンナノチューブ(Carbon nanotubes, CNTs)をテンプレートにした独自のアプローチで取り組んでいる。1次元構造をもつナノダイヤモンドは構造の制御が難しく,興味深い物性が期待されながら,その合成はほとんど報告されていなかった。申請者はカーボンナノチューブの内部でダイヤモンド分子の誘導体を反応させることにより,ダイヤモンドの部分骨格が直鎖状に連結した“ナノダイヤモンドポリマー”の合成に成功した。 実験では原料としてダイヤモンドの部分骨格であるジアマンタンを用いた。融合反応に先立って,化学的に不活性なジアマンタンの橋頭位に脱離能の高い臭素基を導入した。これにより橋頭位の炭素原子の反応性を向上させ,橋頭位間の選択的な結合が可能になる。この誘導体をカーボンナノチューブの存在下で真空昇華させるとナノチューブの内部で反応が進み,ジアマンタン骨格が共有結合で結合したナノダイヤモンドポリマーが形成する。 合成したナノダイヤモンドポリマーの構造は主に,透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscopy, TEM)を用いて解析した。TEMによる観察では二層カーボンナノチューブに等間隔で並んだ点の列が確認され,その中心間距離(0.64 nm)は前駆体が一列に並んだ場合(>1 nm)よりずっと小さい。この間隔は密度汎関数法で予想される値とよく一致する。また,赤外分光法やTEMによる組成分析では生成物の構造がジアマンタンの分子骨格に由来することも示唆された。これら一連の解析結果はナノチューブ内にナノダイヤモンドポリマーが形成されたことを示す明確な証拠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では新奇1次元ナノダイヤモンドの合成に成功したばかりでなく,このナノダイヤモンドポリマーの生成機構も明らかにした。この反応がカーボンナノチューブ表面に付着した鉄ナノ粒子(カーボンナノチューブを合成する際の触媒の残渣)に起因する。副生成物の分析から鉄ナノ粒子と接触した前駆体は臭素を脱離し,橋頭位にラジカルが発生していることを明らかにした。このラジカル中間体がカーボンナノチューブの内部で重合し,ポリマーを形成すると考えられる。さらにこの知見に基づくアプローチにより,われわれはチオフェンのハロゲン誘導体からポリチオフェンを合成できることも見出しつつある。すなわち,ハロゲン誘導体のCNTテンプレート反応による本合成法は多様なポリマーの合成に応用できるユニバーサルな手法であり,未知のポリマーを探索するための強力なツールとなり得る。なお,この研究成果は現在,J. Am. Chem. Soc.誌に投稿中である。 以上の理由により,H26年度の研究は当初の予定以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でダイヤモンド分子のハロゲン誘導体をカーボンナノチューブ内部で熱融合させることにより,ダイヤモンド分子の主骨格が連結したポリマーが生成することが明らかとなった。さらに,この合成法は他の直鎖状ポリマーにも応用できることを見出しつつある。 本年度はこれらの知見をもとに,多種多様な直鎖状ポリマーを合成していきたい。特に,われわれは導電性ポリマーにフォーカスした合成実験をすでに始めている。これらのポリマーはカーボンナノチューブの電子状態を劇的に変える可能性があり,その物性測定に興味がもたれる。また,球面収差を補正した透過型電子顕微鏡を用いた構造解析により,これらのポリマーの原子分解能での観察も行う予定である。さらに本年度はこれまでの高分解能観察だけでなく,暗視野像解析(HAADF-STEM)法の利用も検討する。本手法では撮像だけではなく,電子エネルギー損失分光法を用いた電子状態解析も併せて行うことができるため,ポリマーを内包した構造と電子状態について新たな知見を得ることができると考えている。 また先に合成したナノダイヤモンドポリマーに関してもその物性評価を進めていく。CNTテンプレート反応の生成物は超音波照射による抽出が可能である(ACS Nano 2010, 4, 5807)。今後は合成したナノダイヤモンドポリマーをCNTから抽出し,その引っ張り強度の評価を行う予定である。
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Research Products
(10 results)