2015 Fiscal Year Annual Research Report
プローブパーソンデータと都市空間の数理的記述を統合した歩行者行動解析
Project/Area Number |
14J10824
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大山 雄己 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 歩行者回遊 / 経路選択行動 / 離散選択モデル / GPSデータ / 交通量配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
確率的な交通配分を行なうにあたって「経路選択肢集合の列挙」は大きな課題である。従前の理論では,ネットワークに正の効用を持つサイクリック構造が含まれる場合,配分結果算出が不可能になるという課題を残していた.そこで本研究は,A)ネットワークの時間構造化,B)時間制約/時間割引率を含む動的意思決定モデルの構築を行なった経路選択モデルを新たに構築した.時間構造化処理を行なうことで,計算対象となるネットワークからサイクリック構造を除去でき,さらに時間制約を与えることで期待効用を後ろ向き帰納法によって求解することが可能となった.単純なネットワークを用いてモデルの特性分析を行い,配分結果が既存理論との整合性を保ちながら,これまで計算不可能であった効用正のサイクリック構造をもつネットワークにおいても出力可能となることを明らかにした.
一方で,実行動である経路の移動情報をどのように取得するかという課題が存在する.本研究で対象とする歩行者の経路情報の取得においては,A)車両に比較して自由で多様な経路選択行動の記述,B)ストリートキャニオン等の空間に依存するGPS誤差の考慮という課題に対処する必要がある. 観測が疎な箇所・バラつきの大きい箇所においては観測データの信頼性が低い.そこでImplicit型の経路選択モデルを導入し,リンク単位に経路を観測していく手法を提案した.リンクベースの観測手法では,観測誤差をリンク固有の変数として推定することが可能になる.これにり,空間特性によるGPS観測誤差の違いを考慮できた.また,観測モデルと経路選択モデルのモデル間構造推定手法を提案し,初期パラメータ設定の持つバイアスを軽減できることを明らかにした.また,プローブパーソンデータを用いて,提案モデルを適用して歩行経路の観測及び経路選択モデルの推定を行ない,構造推定により結果が大きく改善されることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プローブパーソンデータを用いて歩行者の回遊行動を解析した論文において、日本都市計画学会の年間優秀論文賞を受賞した。 その後、歩行者の行動解析に引き続き取り組み、詳細な文献調査と比較計算を通じて、既存の配分・観測理論が持つ問題点を整理するとともに、時間構造化ネットワークや構造推定・観測パラメータの一般化と言った独自の理論だ提案・展開できた。現在はその内容の精緻化に努めている。 また,国際学会での発表,議論といった研究者として必要な科学的コミュニケーションの経験を積むこともできた。今年度も既に複数の学会に受理されている。
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Strategy for Future Research Activity |
土地利用の変化モデルを構築し,歩行者の行動モデルとの相互作用を分析する研究も進行中である.個人の確率的な行動と,計画主体の意思決定を相互に考え,最適な都市計画・施設配置計画手法を考える. また,次年度は学会発表・論文投稿を通じて,研究のさらなる深度化を行なうこと,空間変化との相互作用の理解,実データを用いた時間構造化ネットワーク上のパラメータ推定などが研究課題として挙げられる.
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Research Products
(4 results)