2014 Fiscal Year Annual Research Report
リモートセンシングによる有効エネルギーを考慮した植生の蒸散機能指標の開発と応用
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14J10847
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 裕貴 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | リモートセンシング / 植物 / 蒸発散 / 情報工学 / 温度画像 / 画像計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日射や気温といった気象要素の影響を考慮した、植生の蒸散機能(主に気孔コンダクタンスを想定)指標の開発を目的としている。初年度には、有効エネルギーを考慮した気孔コンダクタンス指標を検討した。まず、手法の理論的背景を整理するために、葉面上または植物群落上におけるエネルギー収支式を再整理し、指標のモデルの構築を行った。具体的には、エネルギー収支式と顕熱輸送・潜熱輸送のバルク式の連立方程式を整理し、葉気孔コンダクタンスの応答を示す指標を候補として提案した。続いて、購入したコンピュータとシミュレーション用ソフトウェアを用いて、物理シミュレーションプログラムを作成し、様々な気象条件と葉(または植物群落)特性の下での、葉の気孔コンダクタンスに対する指標の応答を調べた。具体的には、気象条件に関しては、気温、下向き短波放射、風速、相対湿度を、葉特性に関しては、葉角、葉面積、アルベドを、植物群落特性に関しては、群落高さ、葉面積指数、アルベドを変化させたときの、それぞれの要素が温度指標に与える影響について、シミュレーションにより評価を行った。評価では従来提案されている温度指標(葉-気温差、作物水ストレス指標、蒸散輸送係数、気孔コンダクタンス指標)との性能比較を行い、提案指標が最も気象条件や葉(群落)特性の影響を受けずに、葉気孔コンダクタンスの応答を示していることを示した。また、実際の植物に対して蒸散機能指標の画像を作成するために、シミュレーションの他に、実験室で赤外線カメラを使用して植物の表面温度を計測するシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り、気象要素の影響を考慮した植生の蒸散機能指標の候補をモデルの整理により提案し、シミュレーション用ソフトウェアを用いて、物理シミュレーションプログラムを作成して、様々な気象条件と葉(または植物群落)特性の下での葉の気孔コンダクタンスに対する指標の応答を調べた結果、従来提案されている温度指標と比較して気象条件や葉(群落)特性の影響を比較的受けずに、提案指標が最も葉気孔コンダクタンスの応答を示しているという結果を得たことにより、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、新たに開発した指標の理論的背景をもとに、提案指標の精度検証を行う予定である。地上計測による検証に関しては、圃場にて、熱赤外カメラを用いて作物を撮影し、温度指標画像を作成する。同時に、光合成蒸散機能システムで実測した作物の気孔コンダクタンス・蒸散速度と比較し、指標の精度を検証する。広域での検証では、リモートセンシング衛星の画像を、画像解析用ソフトウェアを用いて解析する。検証結果をもとにモデルの再改良を加え、最終的に研究成果を、国内・国際学会において発表、および論文投稿を行う予定である。
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