2014 Fiscal Year Annual Research Report
科学の諸分野における感性の測定にかんする哲学的研究
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14J10856
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
太田 陽 名古屋大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 科学哲学 / 心理学の哲学 / 美学 / 実験美学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、(1)科学における感性の測定の方法論、(2)感性的なものの存在論 という二つの課題に取り組んだ。
(1)心理学(実験美学)の分野から、感性的判断にたいする黄金比の効果についての研究を事例として取りあげて、方法論的検討を加えた。近年の研究をサーヴェイした結果、「黄金比をふくむ図形が好まれる」という黄金比仮説の正否について未だ合意が得られていない研究の現状を示した。そのうえで、そのような見解の不一致の原因として、研究ごとに実験設定(実験参加者に提示する刺激のタイプや、参加者におこなわせる課題の種類、くわえて、芸術に関する専門知識を一例とする参加者要因の測定手続きなど)が大きく異なっているという問題を明らかにした。この研究成果は、国際学会 the Congress of International Association of Empirical Aesthetics にて口頭で発表した。
(2)哲学的美学における感性的なものの実在論論争のサーヴェイを進めた。鮮やかである・バランスがとれている・複雑である・優美であるといった、芸術作品などの評価の際に参照される感性的性質が心と独立に存在するのか、あるいは、「ある絵画作品が鮮やかである」といった感性的性質の帰属にかんする主張の正誤を問うことはできるのかなど、いくつかの争点をめぐる哲学者たちの議論を整理し批判的に検討した。この課題ついての取り組みは現在も継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題(1)については、予定通り計画を進めることができ、国際学会にて口頭発表をおこなうなど、一定の成果を出した。
課題(2)のうち、哲学的美学における感性的なものの存在論については、ある程度研究を進めることができたが、科学哲学における測定の実在論については、着手することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(2)について、哲学的美学における感性的なものの存在論の分析を継続する。この中間的な経過報告として、来年度初頭に学会発表をおこなう予定である。また、科学哲学における心理測定の実在論および心理測定学の知見との統合の可能性を検討する。
課題(1)については、ひきつづき実験美学を事例として、感性の測定独自の方法論的・概念的問題を明らかにし、この解決案を検討する。この研究結果について学会誌への論文投稿をおこなう。
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Research Products
(2 results)