2015 Fiscal Year Annual Research Report
結晶構造解析による赤痢菌エフェクターの作用機構の解明とその応用
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14J10879
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西出 旭 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 赤痢菌 / エフェクタータンパク質 / OspI / IpaH / ユビキチン経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原菌は感染に際し、エフェクターと呼ばれる約30種類のタンパク質を宿主細胞へ分泌し、宿主の持つ防御機構を妨げることで感染を成立させる。これらの中で、脱アミド化酵素OspI及びユビキチンリガーゼIpaHファミリータンパク質は自然免疫応答を抑制することが、報告されている。 先行研究として赤痢菌エフェクターOspIの構造研究を行い、OspIによる特異的なUbc13認識機構を明らかにした。しかし、赤痢菌による宿主免疫系の制御にはIpaHファミリーも関わっており、OspI単独の研究だけでは病原性細菌による宿主の免疫系阻害機構の理解およびこのエフェクターを制御することによる薬剤の開発には不十分である。そこで、OspIの研究と共にIpaHの構造解析を行うことにより、病原性細菌による宿主免疫系の抑制機構の理解および、エフェクターの機能を制御する薬剤開発の基盤構築を目的として本研究を行った。 IpaH4の低分解能結晶構造は26年度研究に決定したが、27年度の研究において結晶化条件を検討することにより分解能を3.4Åに向上した。これにより以前の電子密度では決定できなかった領域の分子モデルを新たに決定し、モデルの改善に成功した。また、IpaH4と相互作用することが示唆されているE2酵素Ubc13との相互作用解析を行った。さらに、IpaHファミリーの活性制御機構を明らかにするため、X線小角散乱を用いてIpaH4およびユビキチン化活性の特徴が異なるIpaH3、IpaH9.8の3種類のIpaHファミリータンパク質の溶液構造解析を行った。 阻害剤探索では、26年度研究で相互作用が示唆されていた化合物を使用したユビキチン化活性測定により、ユビキチン化活性への化合物の影響を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度研究によりIpaH4の単独結晶構造を3.7Å分解能で決定したが、分解能の向上を目的とした結晶化条件の検討を行った。その結果、旧結晶とは異なる結晶系で、IpaH4の単独結晶構造を分解能3.4Åで決定することに成功した。新規結晶では、旧結晶では電子密度の確認できなかったN末端8~26番目までのアミノ酸残基、C末端NELドメイン、535~547番目の電子密度が確認でき、これらの領域のモデルを新たに構築することができた。また、IpaH4はK63型ユビキチン鎖合成活性を示し、K63型ユビキチン鎖合成に関与するE2酵素Ubc13との相互作用が示唆された。そこで、IpaH4とUbc13との相互作用を、Pulldown解析及びゲルろ過クロマトグラフィーにより解析をした。 本研究で決定したIpaH4単独構造はN末端LRRドメインとC末端NELドメインが直列に連なった構造を形成していたが、IpaHファミリーは自身の活性を制御するためにLRRドメインがNELドメインを覆う様に配置する自己阻害型構造をとると考えられてきた。そこで活性の異なる、IpaH4、IpaH3、IpaH9.8の3種のIpaHファミリーを用いてX線小角散乱解析を行った。その結果、どのIpaHファミリーにおいても溶液中では伸びた構造を形成しており、報告されていた自己阻害型構造が活性制御に関与しないことが示唆された。 阻害剤探索については、タンパク質の変性温度を利用した相互作用解析Thermal Shift Assayにより結合が示唆されていた化合物を用いて、IpaH4.5のNELドメインのユビキチン化活性への影響を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究よりIpaHファミリーにおいて自己阻害型構造が確認されなかったことから、異なる分子機構によりIpaHファミリー間の自己ユビキチン化活性の特徴が決定されていると考えられる。そこで、次にIpaH中のユビキチン修飾されるLys残基の保存に着目し、活性の低いIpaHと活性の高いIpaHのLys残基を交換した変異体を作製し、ユビキチン化活性測定実験を行い、Lys残基の保存と活性の関与を検証する。また、自己阻害型の結晶構造が報告されているサルモネラ菌IpaHファミリーSspH2を用いた、X線小角散乱解析を行い、溶液中で自己阻害型構造をとっているかを検証する。IpaH4は他のE2酵素とも、Pulldown実験による相互作用解析を行うと共に、Ubc13を用いて、等温滴定カロリメトリにより結合親和性を測定する。 阻害剤探索については、OspIの阻害剤との相互作用解析、阻害効果の測定、複合体の結晶化を行う。
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Research Products
(3 results)