2014 Fiscal Year Annual Research Report
テーパーねじによるオビスギ接合性能向上のメカニズム解明
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14J10885
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
白 惠琇 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 軽軟木材 / オビスギ / 木ねじ / テーパー形状 / 接合性能 / メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
宮崎で生育するオビスギのように成長が早い木材は比較的軽くて軟らかいため、木ねじを高比重材に使用する場合と比べて引き抜き性能が低下する。この課題を改善するためにこれまでの研究でテーパーねじを開発し、引き抜き性能向上を実験的に検証した。木ねじのテーパー形状による局部的な圧密効果が木材への拘束力を高めると推測されるが、そのメカニズムを説明できる科学的な根拠は不足している。 そこで、木材の組織構造的特性がテーパーねじの引き抜き耐力に及ぼす影響について検討することにした。今年度の研究では、まず、木材の容積密度数と木ねじの引き抜き耐力の関係を調べた。そして、テーパー形状による引き抜き耐力向上が大きかった試験体とそうでない試験体から採取した木材小片の組織構造的特性を調べ、比較を行った。 具体的には以下のように試験を実施した。引き抜き実験を行った供試材端部から試料を切り出し、中央部から全年輪を含む木材小片を採取した。木材小片は容積密度測定用と組織構造観察用の2種類を用意した。これらの木材小片はメタノールによる抽出および水での煮沸処理をほどこして、木材抽出成分の影響を取り除いた。容積密度数は生材時の体積と全乾時の重量から求めた。仮道管の組織構造特性は水につけた試料の切片を作成し、染色した後、プレパラートにして光学顕微鏡で観察した。また、年輪内の密度変化は木材小片を特殊ツインソーで厚さ2mmに製材し、気乾状態で軟X線撮影装置を用いて撮影した後、年輪解析プログラムにより算出した。 その結果、引き抜き耐力の増大が大きかった試験体は、早材から晩材に移行する部分に中間的仮道管を比較的多く含んでいることがわかった。これにより、細胞壁が厚く扁平である中間的仮道管の形状が引き抜き耐力向上に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、木材の容積密度数と木ねじの引き抜き耐力との相関関係を調べた。その結果、平行ねじと比べてテーパーねじは相関係数が低下する傾向が見られ、その関係が弱くなることがわかった。既往の研究によると、木ねじの引き抜き耐力は木材の密度や比重と密接に関係するとされ、高比重材の方が大きな引き抜き耐力である。しかし、今年度の研究によって、テーパーねじの引き抜き耐力が増大する仕組みは、木材全体の密度や比重では説明できないことを明らかにした。 次に、木材の組織構造的特性を調べた。平行ねじと比べて引き抜き耐力が大きく増大した試験体とそうでない試験体の木材小片を取り出し、工学顕微鏡で観察した。引き抜き耐力の増大が大きかった試験体で共通している特徴は、早材から晩材に移行する部分に中間的仮道管を比較的多く含んでいることであった。中間的な仮道管は細胞壁が厚く扁平であり、テーパーねじにより圧密を受けて押しつぶされると引き抜き耐力への寄与度が高い典型的な晩材仮道管のような形状に変化すると推測される。これにより、木材の組織構造をミクロに分析することでテーパーねじによる引き抜き耐力向上のメカニズムを解明できる可能性が示唆された。 今年度の研究成果によって、テーパーねじによる引き抜き耐力向上のメカニズムについて、仮説を立てることができた。次年度で、伝統的なはぎあわせ技術から推測された圧密効果を、仮道管の形状に着目し、定量化することで、解明できると期待される。したがって、現在までの達成度を(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
テーパーねじによるオビスギの接合性能向上についてそのメカニズムを定量的・定性的分析により解明するために研究を進めた。今年度の研究成果から中間的な仮道管が多く含まれる木材ほど、テーパーねじによる引き抜き耐力増大が大きいことを見出した。次年度、仮説の検証実験を進める予定である。 また、テーパー効果を木ねじの形状違いによる応力状態との関係からも分析する。木ねじを繊維直角方向にねじ込んだ後、静的単調加力を行った試験体の縦断面から破壊性状を観察すると、テーパーねじは供試材の表層部に持ち上がるような破壊が生じていた。このことから応力分布を調べる意義があると考えた。すなわち、木ねじに荷重が作用する時、接触木材にはこれに抵抗する応力が発生するが、木ねじの形状により応力状態が異なる傾向を示すと予想される。接触木材との境界面に発生する応力状態は実験で測定することが困難であるため、有限要素法による解析で把握することにした。有限要素法を用いた先行研究を調べたところ、ボルトの埋め込み深さによって応力集中が生じ、不均一な応力度分布を示す解析結果が報告されていることがわかった。これに着目し、テーパーねじの大径部が、木材表層部に集中すると推測される応力に対してどのように抵抗するか分析を進める予定である。このように、木ねじと木材の境界面における応力度分布を解析することで、木ねじの形状による応力集中の傾向と接合性能の向上率との関連性を明らかにできると期待される。
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Research Products
(2 results)