2014 Fiscal Year Annual Research Report
フッ化グラフェンの電子物性と低消費電力デバイスへの応用
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14J10949
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田原 康佐 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | グラフェン / スピン緩和 / ダイヤモンド / NVセンタ / 磁気共鳴 / 磁気センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フッ化グラフェンを低消費電力デバイス、特にスピントロニクスデバイスへと応用することを目的としている。黒鉛の単原子層であるグラフェンは、長いスピン緩和時間を持つためスピン輸送チャネルとしての性能が期待できる。一方で、グラフェンのみを用いて電子スピン偏極やスピン流を生成することは困難である。不純物でのresonant skew scatteringによるスピンホール効果を用いれば、グラフェンのみを用いてスピン流を生成し、グラフェンのみのスピントロニクスデバイスを実現できる可能性がある。 このような背景から、本年度の前半では、フッ化グラフェンのスピンホール効果の検証実験を行った。採用前年度までに確立したフッ化グラフェンデバイスの作製技術を発展させ、スピンホール効果検証用のデバイスを作製した。このデバイスを測定した結果、スピンホール効果の存在や制御性を示唆する結果が得られた。ホールバーにおける非局所抵抗のゲート電圧依存性を測定した結果、オーミック成分を大幅に上回る値が得られたほか、逆にこれを下回るゲート電圧も存在することがわかった。 本年度の後半では、フッ化グラフェンと関連した研究として、ダイヤモンド中のNVセンタの磁気センサ応用の研究を開始した。フッ化グラフェン等のスピンホール効果によるスピン蓄積をこの磁気センサで検出することを目的とする。これが実現すれば、今まで光や電荷により検出されてきたスピン蓄積という現象を、磁場によって直接的に検出することになり、スピントロニクスに大きく貢献できる。NVセンタの研究においては、光検出磁気共鳴(ODMR)が最も基本的な測定といえ、このためのマイクロ波照射機能を付加した共焦点顕微鏡を自作することが一般的である。現在までのおよそ半年間で、基本的な測定(共焦点像・ODMR・Rabi振動・スピンエコー等)が可能な測定システムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フッ化グラフェンのスピンホール効果の検証を行うことができたため、おおむね順調に研究目的が達成できたと考えている。ただし、まだスピンホール効果の存在を示したと断言できるほどの結果では無いため、今後より強い証拠を示すための実験を行う必要がある。 NVセンタの研究に関しては申請当初の計画には無かったが、半年間で実験に必要な測定システムを整えることができ、順調な進展だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フッ化グラフェンのスピンホール効果についてより強い証拠を示すために強磁性体からのスピン注入を行い、逆スピンホール効果の検出を目指す。強磁性体からグラフェンへのスピン注入が可能なデバイス構造として、強磁性体-絶縁体(トンネルバリア)-グラフェンという接合構造を作製する必要があり、この作製を行うことが直近の課題である。原子層堆積法によるアルミナ膜をトンネルバリアとして用いることを計画している。 NVセンタの研究に関しては、今後スピン蓄積検出に向けたダイヤモンド試料の最適化とデバイス構造の検討を行う。ダイヤモンド試料の最適化においては、NVセンタの密度・配向性・スピン緩和時間を大きくすることと、深さ方向の分布制御が課題である。
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Research Products
(1 results)