2014 Fiscal Year Annual Research Report
ショ糖合成系の制御がイネの生育および収量形成に果たす役割の解明
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14J10964
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋田 庸一 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | イネ / ショ糖 / 転流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イネの葉におけるショ糖合成の鍵酵素として知られるショ糖リン酸合成酵素(SPS)に着目し、その酵素活性が上昇/低下したイネを解析することで、イネの糖代謝、ひいては生育、収量におけるSPSの役割を明らかにすることを目的としている。 イネのSPS遺伝子の1つであるOsSPS1に関する突然変異系統のうち葉身のSPS活性が有意に低下したノックダウン系統2系統の解析を行った。まず、幼植物の葉身のSPS活性、遺伝子発現をそれぞれの野生型と比較したところ、両系統ともSPS活性およびOsSPS1の遺伝子発現が低下したノックダウン系統であるが、その低下程度は異なっていることが明らかとなった。次に、水田圃場で栽培したイネを用いて糖・デンプン濃度の比較および成長解析を行った。葉身では両系統とも糖・デンプン濃度が高い傾向にあった一方、葉鞘ではデンプン濃度が有意に低かった。一方で、生育に差は見られなかった。以上の結果から、ノックダウン系統ではSPS活性の低下により転流効率が低下している可能性があるが、その生育における影響は通常の生育条件下では限定的であると考えられた。 ノックダウン系統の解析で得られた結果を担保するため、その原品種である日本晴のOsSPS1遺伝子発現抑制系統を作出した。 また、OsSPS1を破壊した突然変異系統の解析からOsSPS1の花粉の糖代謝における関与が示唆されていた。そこで、穎花および花粉における発現解析、正逆交配および成熟花粉割合・花粉発芽率の測定を行った。その結果、OsSPS1が破壊された花粉は正常にデンプンが蓄積して成熟するが、発芽することができないことが明らかとなり、OsSPS1の花粉の発芽における重要性が示された。 葉身のSPS活性が高い系統であるNIL-SPS1については、戻し交雑を行うとともにそのOsSPS1遺伝子発現抑制系統を作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の解析により、OsSPS1ノックダウン系統の性質が明らかとなり、新たに作出した遺伝子発現抑制系統と合わせて次年度以降の解析に用いる供試材料が確立された。また、OsSPS1の花粉における役割に関する解析は研究計画を前倒しして実施したものであるが、その内容をまとめたものが英語原著論文に受理されており、計画以上の結果が得られたと言える。NIL-SPS1を用いた解析に関しては戻し交雑が予定より1年遅れているものの、遺伝子発現抑制系統の作出は計画通り進行しており、次年度以降の解析には支障がないと考えられる。以上の結果から判断すると、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
OsSPS1ノックダウン系統および本年度作出した遺伝子発現抑制系統を様々な環境条件下で栽培し、光合成速度の比較や14Cを用いたトレーサー実験による転流効率の比較を含めた解析を行うとともに、水田圃場においてノックダウン系統の収量および乾物生産特性の評価を行う。 また、NIL-SPS1については戻し交雑系統のF2個体を水田圃場にて展開し、遺伝子型と一穂籾数との関係について評価するとともに、遺伝子発現抑制系統を用いて一穂籾数を中心とした生育および糖代謝の解析を行う。これらの解析により、OsSPS1と一穂籾数の関係を明らかにする。
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Research Products
(2 results)