2014 Fiscal Year Annual Research Report
鉄窒素錯体を用いた窒素分子の活性化による直截的な含窒素有機化合物合成法の開発
Project/Area Number |
14J11004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今吉 隆治 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 窒素固定 / コバルト / シリルアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属錯体を用いた穏和な反応条件下における窒素分子の触媒的変換反応は古くから研究されているが,その成功例は数例に限られている。筆者の所属する研究室ではフェロセンやペンタカルボニル鉄などの安価で入手容易な鉄錯体を触媒に用いることで,常温常圧の穏和な反応条件下で窒素分子をアンモニア等価体であるシリルアミンへ変換できることを報告している。同反応は窒素-ケイ素結合形成反応であるが,窒素-炭素結合形成反応へと展開することで窒素分子を直接的に含窒素有機化合物へ変換する手法の開発へ繋がると期待される。筆者は研究課題の達成を目的として,詳細な反応機構の解明および高活性な触媒の開発に取り組んだ。研究を遂行する過程において,種々のコバルト錯体がシリルアミン合成反応における有効な触媒として作用することを見出した。これまでにコバルト触媒を用いた穏和な反応条件下における窒素分子の変換反応は達成されていなかったことから,筆者は本反応について詳細な検討を行った。 種々のコバルト錯体を触媒に用いてシリルアミン合成反応を試みた結果,これらのコバルト錯体が鉄錯体と同程度の触媒活性を示すことが判明した。反応中間体の単離には成功していないが,九州大学吉澤研究室との共同研究により,トリメチルシリル配位子および溶媒由来の1,2-ジメトキシエタン配位子を有するコバルト窒素錯体が鍵中間体として生成することが示唆された。この結果をもとに,筆者は電子供与性の二座型配位子である2,2’-ビピリジン(bpy)に注目した。bpy配位子を有するコバルト窒素錯体がより高い触媒活性を示すことが理論計算からも示唆されたため,本反応にbpyを添加した結果,シリルアミン生成量が増加することが判明した。 以上,筆者はコバルト錯体を用いた穏和な反応条件下における窒素分子の触媒的変換反応の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,新たに設計したピンサー型ケイ素配位子を有する鉄錯体の前駆体の合成に成功した。現在,窒素錯体への変換反応を検討している。 また,研究実施状況に述べた通り,筆者はコバルト錯体を用いた触媒的窒素固定反応の開発に成功した。この成果により,今後は鉄に限らず他の入手容易で安価な遷移金属を触媒に用いた窒素固定反応開発への展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄窒素錯体の合成を試みると同時に,コバルト窒素錯体の合成も行い,それらの触媒活性を評価する。また,シリルアミン合成反応において得られた知見をもとにして,遷移金属窒素錯体と炭素ラジカル種の反応を検討し,研究課題である直截的な含窒素有機化合物合成反応の開発を行う。
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Research Products
(6 results)