2015 Fiscal Year Annual Research Report
プラスミドDNA内包ポリイオンコンプレックスミセルの核酸医薬開発に向けた構造制御
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14J11005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
町谷 香織 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 高分子ミセル / 遺伝子デリバリー / DNAパッケージング / PEG密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子治療の臨床応用実現のためには、pDNAの体内動態を的確に制御する遺伝子キャリアの開発が必要である。我々は、poly(ethylene glycol) (PEG) とpoly(L-lysine) (PLys)とからなるブロック共重合体PEG-PLysがpDNAと形成するポリイオンコンプレックスミセル(PICミセル)を遺伝子キャリアとして開発してきた。特に、PICミセルの形態の制御が治療効果に与える影響を見出すべく、PICミセル内部へのpDNAパッケージングの構造制御に取り組んできた。 前年度までの研究では、種々PEG分子量X (X = 2k, 12k, 20k, 30k, 42k)、PLys重合度Yからなる一連のPEG-PLys X-Y PEG-PLysのPEG分子量とPLys重合度を用いた実験により、凝縮開始時点のpDNA上のPEG密度が高い場合にはrod状構造体、少ない場合にはglobule状構造体が形成されることが明らかとなった。PEG密度の定量的解析からrod状形成とglobule状形成の境界PEG密度が見出され、pDNAのrod状/glouble状の形成率を制御することが可能となった。これに基づき本年度の研究では、パッケージング形態の違いが実際に遺伝子キャリアとしての性能にどのように影響するかについて評価した。本年度に行った評価では、主に無細胞遺伝子発現系を用いた。この系を用いることで、細胞への取り込み効率やエンドソームエスケープ等の因子が除外され、培養細胞系を用いるより直接的に凝縮構造の違いと遺伝子発現との相関を評価可能である。遺伝子発現活性を評価した結果、globule状の形成率が高くなるにつれて遺伝子発現が低くなることが確認され、パッケージング形態と遺伝子発現に一定の相関があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りにrod状とglobule状との遺伝子発現の違いを確認したことにとどまらず、rod状の形成率とglobule状の形成率が異なる一連のPICミセルで遺伝子発現を比較し、パッケージング形態と遺伝子発現との間に明確な相関を見いだすことができたため。また、次年度に予定している培養細胞での遺伝子発現評価に向けての予備実験も開始できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、培養細胞系でも無細胞発現系と同様に、パッケージング形態と遺伝子発現の相関が生じるかを検討する。培養細胞を用いた場合には無細胞発現系と異なり、培養環境下でのPICミセルの安定性や細胞取り込み効率などが遺伝子発現に影響し得る。従って、パッケージング形態に加えてpDNAを覆うPEG密度やゼータ電位も、重要な要素となると考えられる。培養細胞における遺伝子発現に影響する各要素について、PICミセルの構造制御によってコントロールすることを目指す。 次に、マウスを用いたin vivoの実験により、PICミセルの生体内での挙動とPICミセル構造との相関を検討する。特に、全身投与型での遺伝子治療薬開発に必須となる長期血中滞留性の実現を目指し、pDNAを覆うPEG密度に着目した解析を行う。さらには抗腫瘍効果の評価も行い、培養細胞における遺伝子発現評価の結果と合わせて考察することで、PICミセルの構造の違いが全身投与型遺伝子治療薬としての性能に及ぼす影響を見出してゆく。
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Research Products
(6 results)