2015 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ政策の根本的転換は生じにくいのか-意思決定前提概念による国民皆保険政策の説明
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14J11036
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三谷 宗一郎 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 医療政策 / 官僚制 / 意思決定論 / 組織学習 / 時限立法 / 政策終了 / コ・メディカル / 比較制度分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、(1)入院事前審査制度、(2)意思決定前提、(3)時限立法、(4)コ・メディカルの役割、(5)医療費適正化政策史の5つの研究に取り組んだ。主たる目的と研究の成果は、下記の通りである。(1)入院事前審査制度研究は、戦前日本の保険者入院事前審査制度の廃止と再導入の挫折過程を明らかにすることを目的とする。非公表の内部文書を含む資料の収集と元厚生官僚5名にオーラル・ヒストリー・インタビューを実施した。まとめた論文は『年報政治学』に投稿し、現在査読中である。 (2)意思決定前提研究は、「組織的に学習された意思決定前提」概念の構築を目指すものである。入院事前審査制度は本概念の構築に向けた事例の一つに位置付けられる。事例研究を終えたので、2016年度から本格的な理論構築を目指す。 (3)時限立法研究は、政策を柔軟に変化させるための制度設計の手法として、米国のサンセット条項に着目し、類似する日本の時限立法が、政策終了を促す役割を果たしているか否かを検証することを目的とする。2015年度に戦後の全時限立法のデータセットを完成させ、その傾向を把握した。2016年度に法制局官僚にインタビューを実施し、仮説を検証する。研究結果は、2016年度の行政学会、政治学会で発表する。 (4)コ・メディカル研究は、日本と途上国のへき地保健医療政策におけるコ・メディカルの役割になぜ大きな違いがあるのかを歴史的に明らかにすることを目的とする。2015年度に日本の政策の変遷をまとめた。2016年度に論文誌に投稿する予定である。さらにセネガルやカンボジアをはじめとする途上国の制度と比較し、国際学会に発表する予定である。 (5)医療費適正化政策史研究は、戦後の医療費適正化政策を概観し、検討された政策オプションや改革の阻害要因をまとめることを目的とする。この研究は、指導教員らと共著する本として出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー依頼の取得が難航したこと、期待する資料の入手が困難だったことなどから、予定は少し遅れているが、博士論文の執筆に向けて順調に事例研究の蓄積が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
入院承認制度に関する複数の元厚生官僚へのインタビューを通じて、政策転換を実現させる要因が抽出された。これまで政策転換を阻害する要因(意思決定前提)、政策転換を実現させるための制度設計手法(時限立法)について検討してきたが、政策転換を実現させる要因についても視野を広げて研究を進めていきたいと考えている。
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