2014 Fiscal Year Annual Research Report
後期ドゥルーズ哲学と現象学の関係の解明をとおした感覚の哲学の研究
Project/Area Number |
14J11048
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小倉 拓也 明治大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | ドゥルーズ / 現象学 / メルロ=ポンティ / シュトラウス / マルディネ / 感覚 / 芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、研究実施計画にある基礎的な文献研究を行いながら、以下のような主要な実績が得られた。 9月のメルロ=ポンティ・サークルでの発表では、ドゥルーズによる現象学者メルロ=ポンティの感覚の現象学への取り組みについて明らかにした。ドゥルーズは、メルロ=ポンティにおいて知覚の構造へと還元される感覚の身分を、シュトラウスを援用しながら還元不可能なものとして擁護しつつ、それでいてその感覚が未分化なカオスではなくそれ固有の論理を持つものであることをマルディネの諸概念を援用して論じている。ドゥルーズとメルロ=ポンティの知られざる関係を解明した点、そしてシュトラウスやマルディネなどのマイナーな現象学者の理論と現代思想におけるその展開の内実を明らかにしたという点で、世界的に見てきわめて意義のあるものだと言える。 5月のエラスムス・ムンドゥス・ユーロ・フィロソフィーのワークショップと、11月の日本現象学会のワークショップでは、応用的な展開を試みた。前者では、ドゥルーズとメルロ=ポンティによるクラインの精神分析理論の読解と援用について論じ、それらの違いが、上記9月の発表でも焦点となった両者の感覚論、そして身体論に如実に反映されていることを明らかにした。後者では、現代の超越論的現象学の展開の中心的存在であるリシールの精神病理学を、メルロ=ポンティ、ラカン、ドゥルーズなどの現代フランスの思想的布置のなかに位置づけることを試みた。これによって、精神病理という観点からドゥルーズと現象学の感覚論と身体論を対照することになり、9月の発表での成果を補完することができた。いずれも、感覚論を主題にドゥルーズと現象学の関係を明らかにしつつ、それを精神分析や精神病理学の思想的文脈と交差させることで、より広い思想史的視座を切り開くことができたという点で、きわめて重要な成果だと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、当初の計画以上に進展している。 当初の計画では、初年度はドゥルーズと現象学一般、とりわけフッサール、ハイデガー、メルロ=ポンティらとの関係に関する基本的な文献研究に集中する予定であった。しかしそれだけにとどまらず、数年を要すると見られていたシュトラウスやマルディネといった、ドゥルーズがその後期の哲学、とりわけ芸術と感覚の理論において援用しているマイナー現象学者の学説と、そのドゥルーズ哲学との関係の解明についても、ある程度の成果を残すことができ、それを学会発表および論文というかたちでまとめることができたことは、当初計画していた以上の成果であった。 また、シュトラウスやマルディネの現象学が、本邦だけでなく、ドイツやフランス本国でもいまだ研究の蓄積がないことを鑑みると、本研究の本年度の成果は、単にドゥルーズ哲学の研究領域だけでなく、現象学の研究領域においても大きな意義を持つものであり、本研究が最終的に目指しているドゥルーズ哲学の研究をとおした現象学研究分野への建設的なフィードバックという点でも、一定の成果を残せたと言える。 それゆえ、本年度の研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策については、当初の研究計画と同じく、基本的には、ドゥルーズと現象学の関係についての文献研究を行っていく。その点に、研究推進方策に関する変更はない。 次年度は、とりわけ、本年度の研究で一定の成果を残すことのできたシュトラウスとマルディネの文献研究をさらに詳細に高い水準で推し進める予定である。そしてその成果を、随時、国内外の発表の場で公表していく予定である。 また、その一環として、受け容れ研究者である合田正人教授とともに、マルディネの主著でドゥルーズが頻繁に援用している『眼差・言葉・空間』の翻訳を作成、刊行することを計画している。これが実現すると、本研究の成果として実に有意義なものとなるだけでなく、本邦の哲学研究それ自体の水準の引き上げに与することができると思われる。 また、本年度の研究でもフランスに渡り、希少な資料の調査と収集を行ったが、今後の研究でも、より積極的にフランスに渡って希少な資料の調査と収集にあたり、専門家との議論を交わしていく予定である。そしてその成果についても、国内外の発表の場で公表していく予定である。
|
Research Products
(10 results)