2015 Fiscal Year Annual Research Report
ENDOR法による光合成酸素発生における基質水分子の同定及び反応メカニズムの解明
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14J11113
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長嶋 宏樹 名古屋大学, 理学(系), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 光合成 / マンガンクラスター / 電子スピン共鳴(ESR,EPR) / 電子核二重共鳴(ENDOR) / 水分解酸素発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素発生型光合成は光のエネルギーを化学エネルギー源へと変換する反応であり、電子供与体として水を利用することが大きな特徴である。光合成における水分解反応は高等植物やシアノバクテリアが持つ葉緑体の光化学系IIタンパク質複合体内にあるMnクラスターで行われる. マンガンクラスターは酸化状態が異なる5つの中間状態S0-S4をもち、光子の吸収により酸化されて状態が変化する。もっとも酸化度の高いS4状態になると水を酸化してマンガンクラスターはもっとも酸化度の低いS0状態へと戻る。このような反応サイクルにより水は酸化されて酸素分子が放出される。この反応サイクルはKokサイクルと呼ばれる。近年のX線結晶構造解析によって光化学系IIの構造が高分解能で解析され、配位している水分子の位置も明らかにされたものの、各S状態の遷移における構造の変化やプロトン放出機構は未だ明らかではない。 本研究ではマンガンクラスター近傍に位置する水分子やアミノ酸が持つプロトンを電子核二重共鳴によって検出し、X線構造解析では困難なプロトンの位置決定を行った。電子核二重共鳴で観測されたプロトンの信号はX線構造を元として位置を決定した。これらのプロトンの位置と電子核二重共鳴信号の帰属を実験的に確認するために、マンガンクラスターを構成しているCaの位置に摂動を加え、Ca除去、Sr置換を行い電子核二重共鳴の信号の変化を観測した。さらにアンモニア分子がどの水と置き換わるかを確かめるためにアンモニアを添加したマンガンクラスターの構造について電子核二重共鳴法で調べた. 以上の研究によりマンガンクラスターの周辺構造及びマンガンクラスター近傍の、生化学的処理による構造変化を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではS2状態のマンガンクラスターの構造を詳細に明らかにするために電子核二重共鳴測定を行った。本研究では予定通りにCa除去マンガンクラスターの測定及び解析を行い、さらにSrを置換したマンガンクラスターの測定と解析を行った。以上のことから、以前の研究で行われた構造解析の結果が理論的にも実験的にも矛盾しないことが確かめられた。以上の成果についてはThe Journal of Biological Chemistryに発表されている。さらに、他のマンガンクラスターの中間状態の試料調整や他の生化学的処理による構造の変化についても取り組み初期的な結果は確認することができていることから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画の通り、マンガンクラスターのS2状態の構造だけでなくS0状態やS3状態の試料調製及び電子スピン共鳴測定を行う。また、マンガンクラスターのS2状態における摂動として、アンモニア分子やアンモニウムイオンの位置の電子核二重共鳴による決定、及びメタノールなどのアルコール分子存在下での構造変化及び、それらの小分子の位置決定を通してマンガンクラスターの水分解メカニズムの機能解明を目指して研究を進める。
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Research Products
(3 results)