2014 Fiscal Year Annual Research Report
抗体/受容体キメラを用いた多能性幹細胞の造血系細胞への低コスト分化法の開発
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14J11124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中林 秀人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞分化 / 人工受容体 / ES細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスES細胞における既存の無血清培地中での造血系系譜への分化において、初期段階で重要なシグナル伝達分子として知られる骨形成因子4(BMP4)に着目し、その受容体であるBMP受容体の抗体/受容体キメラ化と評価系の構築を行った。無血清培地中で胚様体を形成させ、BMP4を加え、3日間培養することにより、中胚葉系マーカーであるFlk-1陽性細胞が誘導されることが確かめられた。また、同様の実験をBMP4非存在下で行うと陽性細胞が全く誘導されなかった。この結果から、Flk-1陽性細胞の出現を指標とすることにより、抗体/BMP受容体キメラの機能を評価することができるのではないかと考えられる。続いて、BMP受容体キメラをES細胞に発現させ、実際にその機能評価を行うこととした。マウスES細胞にキメラ受容体を発現させるために、EF1αプロモーターを搭載したレンチウイルスベクターを用いた。しかし、ES細胞において、空ベクターでは見られなかった毒性が見られ、キメラ受容体をES細胞に発現させることが出来なかった。 細胞の分化には複数のサイトカインが関わることが多く、それらのサイトカインを代替しようとした際、異なる抗原を用いて抗体/受容体キメラを活性化する必要がある。そこで、フルオレセイン(FL)に対する抗体と、ジニトロフェニル(DNP)に対する抗体を用い、抗体/受容体キメラを作製し、それぞれの抗原であるFL標識BSAとDNP標識BSAがそれぞれ目的のキメラ受容体のみを活性化できるかを調べた。IL-3依存性細胞株Ba/F3にキメラ受容体をそれぞれ発現させ、IL-3非存在下でFL標識BSAとDNP標識BSAを加えて培養を行った。その結果、正しい抗原・抗体ペアの時のみ増殖が誘導されることが確かめられた。このことから、抗体/受容体キメラは抗原と抗体のペアを選べば、抗原依存的に別々の受容体を活性化できるということが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、いくつかのサイトカイン受容体に関して、抗体/受容体キメラの作製を行った。そのうちBMP4に関しては、ES細胞における評価系の構築に成功したが、遺伝子導入細胞の樹立に失敗し、培養細胞での評価系を構築できなかった。また線維芽細胞増殖因子と血管内皮細胞増殖因子の受容体に関しては培養細胞における機能が確認できたが、ES細胞における評価系を構築できなかった。 また、当初の予定では来年度に行う予定であった、異なる複数の抗原を用いて、別々の抗体/受容体キメラを活性化する技術の開発を行った。異なる抗原に対する抗体を持つキメラ受容体を作製し、別々の抗原で刺激した際に、それぞれ目的の受容体のみを活性化させることに成功した。 以上より、当初の研究計画より遅れている部分と、前倒しで達成できた部分があるが、全体的に見ると研究の進展はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度に達成することのできなかったES細胞での評価を行う。また、ES細胞に限らず、マウスの前駆細胞やヒト間葉系幹細胞など、他の細胞において評価系を構築し、すでに培養細胞において評価が終了しているキメラ受容体をより治療に近い細胞で評価することを目指す。 さらに、本年度に達成した、異なる複数の抗原を用いて別々の抗体/受容体キメラを活性化する技術を、細胞分化へ応用することに挑戦する。
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Research Products
(1 results)