2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J11135
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 春佳 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 核膜 / クロマチン / Lamin B Receptor |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞の核内では、一般的にクロマチンが核膜に結合している(クロマチン-核膜結合)。クロマチン-核膜結合領域である核の内膜層では、核内膜タンパク質やラミンなどの分子がクロマチンや転写調節因子などと相互作用しており、クロマチンの複製や転写の制御を積極的に行う重要な“場”であることが示唆されているが、実際のクロマチン‐核膜結合制御機構は不明であった。我々は、アフリカツメガエル卵無細胞系を用い、核内膜タンパク質LBR(Lamin B Receptor)が、クロマチン-核膜結合の維持に主要な役割を果たすことを明らかにした。当該年度においては、LBRによるクロマチン‐核膜結合の分子メカニズムの解明を中心に研究を行った。 (1) LBRを用いたpull-down解析を行ったところ、ヒストン、ラミンB1およびHP1γがLBRのクロマチン‐核膜結合に必要な領域に結合することが示された。この解析により、LBRとヒストンの相互作用によるクロマチンの直接的な結合と、LBRに結合するHP1γを介した間接的なクロマチンとの結合の両方により、LBRがクロマチンと核膜の結合を維持すると推察される。 (2)クロマチン‐核膜結合の制御がクロマチンの複製に影響を与えるかを明らかにするため、蛍光標識したdUTPを添加した卵抽出液中で初期胚型の核を形成させ、クロマチンの複製量を定量した結果、クロマチンの複製には影響を与えないことが示された。 (3)当該年度の研究により、初期胚の核では、LBR以外の分子Aがクロマチン‐核膜結合の維持に関与することを初めて見出し、体細胞と未分化な初期胚では、異なるクロマチン‐核膜結合維持機構が働いていることを示した。この発見は、クロマチン‐核膜結合のメカニズムとその生理的意義の解明にむけて大きな足掛かりとなると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、当初の予定通り、LBR によるクロマチン‐核膜結合に関わる基本的な分子を同定できたことに加え、クロマチン‐核膜結合がクロマチンの複製に影響を与えないことを示した。クロマチン‐核膜結合と核ラミナ構造の関連についても、LBR のドメイン欠損変異体を用いた解析により、クロマチン‐核膜結合の維持そのものが初期胚型核の核ラミナ構造を変化させることを示した。また、現在進行中の解析において、LBR が分裂期における正常な核の分裂に影響を与えるという結果を得ており、クロマチン‐核膜結合の制御が、核内においてどのような機能を担っているかの一端が明らかになりつつある。また、LBR 以外のクロマチン‐核膜結合因子を見出し、初期胚と体細胞で異なるクロマチン‐核膜結合制御モデルを提唱できたことは、クロマチン‐核膜結合の生理的意義の解明の大きな一歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究計画に従い、ツメガエル胚を用いてクロマチン‐核膜結合が核内でどのような機能を担っているのかを明らかにする。LBRによる体細胞型のクロマチン‐核膜結合が、ツメガエル初期胚での核分裂や、発生に必須な胚性遺伝子の転写活性化にどのような影響を与えるかを解明する。また、新たに見出された分子Aによる初期胚型のクロマチン‐核膜結合が、初期胚の特徴である未分化性の維持や、早い細胞分裂にどのように寄与しているかも併せて明らかにしたい。
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Research Products
(1 results)