2014 Fiscal Year Annual Research Report
銀河ダイナミクス解明へ向けたTESカメラのための高密度信号多重化SQUIDの開発
Project/Area Number |
14J11200
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 和広 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | X線検出器 / 超伝導遷移端型温度計 / 超伝導量子干渉計 / 周波数分割型信号多重化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では将来の小型科学衛星搭載を目指した、撮像・分光が両立出来るX線TESカメラ(X線TES型マイクロカロリメータアレイ)の実現に向け、読み出しに用いる超伝導量子干渉計(SQUID)とその駆動装置の開発を行っている。H26年度は小型衛星向けの低発熱型SQUIDと、TES素子を16素子まで多重化できる駆動装置の開発を目指した。低発熱型SQUIDについては、臨界電流値をこれまでよりさらに2割削減する代わりに直列アレイの数を5割増やし、発熱量はそのままゲインを4割程度まで大きくすることが出来た。これにより衛星搭載に向けた要求を全て満たすSQUIDの開発に成功した。駆動装置については、現状のADC/DACボードとFPGA評価ボードを用い多重化数を16素子まで発展させた。単体試験においてS/N比の測定を行い、16素子までの多重化であればを満たしたまま、要求値を満たすことを確認した。さらに16素子以上の多重化ではDACの分解能によりS/N比が制限され、要求を満たすためにはDACのチャネル数を増やさなければならないことが証明された。また、開発した低発熱型SQUIDと駆動装置を用い実際のTES素子の読み出し試験を行い、4素子の多重化読み出しに成功した。原因不明のノイズによりエネルギー分解能は20 eV (@5.9 keV)程度であったが、開発した読み出しシステムによる分解能への寄与は2 eV程度と見積もられ、要求値以内であることを確認出来た。これにより衛星搭載に向けたX線TESカメラの実現性が大きく前進し、開発に一定の目処が立ったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衛星搭載に向けたX線カメラの実現に向け研究は着実に前進している。低発熱型SQUIDについては発熱、ゲイン、ノイズなどの要求を満たすSQUIDの開発に成功している。また、極低温ステージの集積率を上げるべく、周波数分割用のLCフィルタを搭載したSQUID基板の試作にも成功した。駆動装置についてもH26年度の目標としていた16素子対応は完了し、単体試験においては要求されるS/N比を満たしている。開発したSQUIDと駆動装置で4素子の多重化読み出しに成功し、読み出しシステムに依るエネルギー分解能は要求値以内に収まっていることが確認出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
開発したシステムを用いたTESの多重化読み出しの際に原因不明のノイズが発生し、エネルギー分解能を著しく悪化させている。今後はノイズ源の特定を最優先とし、エネルギー分解能の改善を急ぐ。また、16素子以上の多重化を目指し、ADC/DACボードの独自開発も視野にいれ駆動装置の開発を続けて行く。さらに極低温ステージの高い集積率を目指し、試作したLCフィルタビルトイン型のSQUIDチップの詳細な評価を行い、それを用いたTESの読み出しに向け準備を進める。
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Research Products
(2 results)