2014 Fiscal Year Annual Research Report
地域国際法としてのラテンアメリカ国際法の現代的意義に関する理論的・実証的研究
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14J11424
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中井 愛子 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 地域的国際法 / ラテンアメリカ国際法 / 庇護権 / 外交的庇護 / ウティ・ポシデティス / カルボ主義・ドラゴ主義 / 国家承認 / 政府承認 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は3年計画の初年度であるため、予定された主な研究活動はラテンアメリカ、とくに南米諸国での資料収集(国際法一般、ラテンアメリカ国際法一般、カルボ主義、ドラゴ主義、ウティ・ポシデティス・ユリス、外交的庇護、承認関連)とその成果の暫定的な総括であった。 南米4カ国での現地調査の結果、いずれの国でも予想を上回る重要な諸文献を収集・閲覧することができた。それらの文献のなかには、Accioly, Albuquerque Mello, Alvarez, Jimenez de Arechaga, Quesada, Quintana等、北米・欧州の図書館にも所蔵されている古典あるいは基本文献であるにもかかわらず日本ではほとんど参照されていないものも含まれる。 また、現地の公的機関では未紹介のものを含む文書・史料を複数閲覧でき、本研究の充実度は飛躍的に増加した。とりわけ、チリでは20世紀の主要な外交的庇護事件であるスペイン内戦時の在マドリッド・チリ大使館での庇護に関する諸文書、アルゼンチンではドラゴ主義の趣旨をめぐってカルボとドラゴの間で交わされた諸文書、ならびにラテンアメリカにおける国際法学の発展およびラテンアメリカ国際法の観念の構築に大きく貢献した「アルゼンチン学派」の1920年代までの諸文献、ブラジルおよびウルグアイでは対象の国際法分野に関する両国の独特のドクトリンおよび実行に関する諸文書・諸文献を閲覧することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究目的は、欧州と南米で資料収集を行い、それらの地域で比較的多くの文献が収集可能であると見込まれるカルボ主義、ドラゴ主義、ウティ・ポシデティス・ユリス、承認について暫定的な研究成果をまとめることであった。 欧州の諸機関に所蔵されている資料の多くは日本からも入手が可能であったため、年度の初期にそれらの渉猟を重点的に行ってほぼ完了させ、本年度の欧州での調査を中止してその分の費用と日程を全て南米4カ国(チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル)での調査に充当した。その結果、本研究の本来の目的の通りに、ラテンアメリカ現地の文脈により忠実に即した実証研究を可能にする、質・量ともに当初の予定を上回る充実した資料を入手することができた。 南米各国の公的諸機関(外務省、公文書館、国会図書館、国立図書館)では、事前には未知であった希少な所蔵資料を閲覧できたほか、関連の資料を所蔵している他の機関の紹介を受けることができた。これによって、実証研究に不可欠な南米各国の国家実行に関する情報や知見、さらには現地の国際法学者による諸学説を予想よりも豊富に収集できた。 上記のような南米での現地調査の成果を基に、カルボ主義、ドラゴ主義、ウティ・ポシデティス・ユリス、承認に加えて外交的庇護についても最終年度までに新たな知見を発表する準備がほぼ整った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究が順調に進展したため、平成27年度は中米諸国での資料収集と成果のとりまとめに専念する。当初の年度計画では、1.北中米での資料収集、2.新たに入手した資料から得られた知見に基づく平成26年度の研究結果の修正、3.外交的庇護に関する重点的な調査、の3つを主に平成27年度に行うこととしていた。外交的庇護に関する調査に充てる予定であった費用と時間は、中米でしか得ることのできない中米国際司法裁判所(1908-1918)に関する資料・諸文書の渉猟に重点的に上乗せする。
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