2015 Fiscal Year Annual Research Report
地域国際法としてのラテンアメリカ国際法の現代的意義に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
14J11424
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中井 愛子 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 国際法 / ラテンアメリカ / 国際人道法 / ウティ・ポシデティス / カルボ主義 / ドラゴ主義 / 領域法 / 国家責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、メキシコから中米までの北中米諸国を主な対象として、外交的庇護、ウティ・ポシデティス・ユリス、国家承認・政府承認、国家責任法(カルボ主義・ドラゴ主義)の各法制度についての国家実行および諸学説に関する資料の渉猟にあたった。 北中米の3カ国で調査を行い、各種の文書館・資料館等にて、上述の各法制度に関する各国に特徴的な国家実行およびドクトリン、そして地域的国際法の理論に関する諸文献を収集した。特に、研究実施計画の予定通りに、カルボ主義を応用したメキシコ独自のドクトリンであるカランサ主義およびカルデナス主義に関する史資料、中米司法裁判所の設置および実際の運営に関連する我が国に未紹介の史資料等を閲覧・収集することができた。ラテンアメリカ国際法の理論は、最も古く重要な地域的国際法の理論であるにもかかわらず、ソビエト国際法など類似の種類の他の理論に比べて研究が進んでいない未解明の理論である。昨年度の南米に引続いて北中米の文脈での関連の諸文献の収集によって、19世紀半ばの黎明期から20世紀初頭の確立期までのその全容をほぼ解明することができた。 収集した諸文献を基に、検討対象である各法制度に関するラテンアメリカ諸国に特徴的な実行の分析を進め、(1)ヨーロッパに起源をもつ法制度・規則であって、ラテンアメリカ諸国の実行によって変化したもの、(2)かつて一般的に実行があったが後にラテンアメリカにのみ残されたもの、(3)ヨーロッパの国際法には元来は存在せず、ラテンアメリカで発生して普遍化したもの、の3種類に分類される関連の国際法の史的展開において、ラテンアメリカ諸国が果たした特別な貢献を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、最終年度の成果発表のために、北中米およびヨーロッパで必要な資料を収集し、その結果得られた新たな知見を昨年度の南米での調査の結果につけ加え、ラテンアメリカ国際法の理論および各法制度に関する暫定的な研究成果を修正することを主な内容としていた。 北中米での調査は期待通りの成果を上げることができ、当初予定していたよりも早く各法規則・法制度の解釈についての論文の取りまとめに入ることができた。他方、研究実施計画で予定されたフランスでの調査は、パリ同時多発テロ事件とその後の非常事態宣言によって延期を余儀なくされた。これによって、ラテンアメリカ国際法が19世紀後半から戦間期にかけてのヨーロッパの国際法学にいかなる影響を与えたかに関する資料収集は、他の手段によってできる範囲で行われた。ラテンアメリカの外からの反応に関する研究が若干遅れたため、全体としては当初の期待を超える成果を出すことができなかったが、研究はおおむね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引続き、現地で渉猟した史資料に基づいて、研究の総括を進める。また、次年度の研究計画で予定された研究に加えて、本年度中に完了予定であった、ヨーロッパ・北米の国際法学におけるラテンアメリカ国際法への反響に関する研究を併せて行う。
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