2014 Fiscal Year Annual Research Report
不適応的な自動思考が再評価方略の選択・効果に及ぼす影響
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14J11437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊原 良太 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 感情制御 / 認知的評価 / 再評価 / 精神的健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
辛い出来事や嫌な経験に対する評価を変化させることによって、自身の感情のコントロールを図る“再評価”と呼ばれる方略について、それが状況や個人の特性によってどのように用いられ、さらにその効果が変化し得るかを、主に3つの研究によって検討した。 まず、再評価のような認知的な感情制御方略を広く測定することができる尺度を、海外の尺度を翻訳することによって作成した。次に、作成した尺度を用いて、個人が状況をどのように認知的に評価するかということと、使用される認知的感情制御方略の間に関連があるかを、質問紙調査によって検討した。その結果、個人が状況を自身にとって重要であると評価したり、影響があると評価したりする場合に、例えば自身を非難する“自責”と呼ばれる方略や、状況を悲観的に捉えてしまう“破局的思考”などの不適応的な方略を使用してしまう傾向があることが明らかとなった。また、状況が個人にとってコントロール可能であると評価したり、状況が良くなるという見通しがあったりする場合に、例えば状況をポジティブに評価し直す“再評価”が用いられやすくなることも明らかとなった。 これらの研究をもとに、さらに先行する状況への認知的評価が、後続の認知的感情制御方略の効果を規定するかを、短期縦断研究を用いて検討した。その結果、状況が自身にとって影響があると評価されたときに、上述の“破局的思考”を用いると、より抑うつや不安を高めてしまうことや、逆に他者を非難する“他責”と呼ばれる方略を用いると、むしろ抑うつや不安が低下するという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と若干異なる手法を用いている部分はあるものの、概ね予定通りのペースで調査を進めており、インパクトのある結果も示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは質問紙による調査研究を行ってきたが、より詳細なメカニズムの検討を行うためにも、実験研究を取り入れる必要がある。また、現在は主に基礎研究を行っているが、今後、例えば感情労働などの実践的な場でこれらの知見を活かすことができないか、その可能性も探っていくべきである。
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Research Products
(5 results)