2014 Fiscal Year Annual Research Report
内部組成勾配を考慮したスーパーアースの内部構造と熱進化の理論的研究
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14J11515
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒﨑 健二 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 系外惑星 / 内部構造 / 熱進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケプラー衛星に続き,中心星近傍惑星の高精度探査計画(K2ミッション,TESS)が計画されるなど,スーパーアースの発見数・質量半径測定例は今後飛躍的に増大することが期待される.スーパーアースの組成構造には,大まかに海王星のような氷成分主体の惑星(以下, 海王星型惑星)や岩石惑星が分厚い大気をまとったような惑星(以下,地球型惑星)の二種類が考えられる.しかし,これらの内部構造・組成・熱進化・形成プロセスには多くの未知な部分が残されていて,これまでは単純な仮定が用いられてきた.その中でも特に,組成が一様な層構造を取ると仮定した内部構造・熱進化のモデル(以下,分化後モデル)が単純化のため使われてきた.一方で惑星内部の組成の不均質性(以下,組成勾配モデル)が太陽系内の巨大惑星の内部構造や進化に大きな影響を与えうることかが指摘されている(Leconte & Chabrier 2012).組成勾配は対流を安定化させるため,熱輸送を鈍化させ熱進化を遅くすることが予想される.このことは系外惑星の質量半径関係にも重大な影響を及ぼすことが予想され,系外惑星においても組成勾配を考慮した熱進化を解くことが必要となるだろう.またより正確に熱進化を理論化することで,実際に観測される質量・半径・年齢関係と透過光分光による分子種同定に適用し,その惑星の過去の状態をより正確に予言を行うことが可能になる.これを用いてスーパーアースの形成理論モデルの検証につなげていきたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年次の計画では,組成勾配を考慮した計算コードの開発,及び海王星型惑星の構造計算と進化計算を行う計画であった.私は計算コードの開発に先立って,内部に非一様な組成勾配を持つ惑星の内部構造および熱進化計算を行うために,基礎方程式,状態方程式の妥当性を検討した.特に組成勾配をもった惑星内部での熱輸送に関して重点的に検討する.そして,内部組成勾配をもった惑星の構造計算および熱進化計算を行い,惑星の水素ヘリウム質量比へどれだけの影響があるかを調べ,分化後モデルと組成勾配モデルで比較する.その結果,惑星内部組成勾配と温度勾配のオーダーを同じ程度にすると水素量は少なくなり,冷却を遅くする傾向があることがわかった.このことは従来の理論モデルに基づいたすいてが水素大気量を過大評価していることを明らかにした.惑星の水素大気量は,惑星の形成過程に依存するため,水素大気量の決定法の改良は惑星形成論の観点でも極めて重要である.
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Strategy for Future Research Activity |
近年では観測データの蓄積に伴い,比較的低温度環境下にある惑星の発見数も増えてきた.特にハビタブルゾーンと呼ばれる,水が凝縮するような領域では,氷成分が多い海王星型惑星の場合,惑星の大気構造と熱進化に大きな影響を与える可能性がある.しかし,水を初めとする氷成分が凝縮するような大気をもった惑星の熱進化は,まだよくわかっておらず,先行研究もまだない状態である.したがって氷成分が凝縮するような大気を持った天体の熱進化を議論するためには,凝縮物を含んだ大気構造を解き,その大気構造と内部構造を組み合わせて検討しなくてはならないため,大気構造の定式化・モデル化とコード作成が新たに必要となることがわかった. 現在は大気と内部構造の相互作用を考慮した計算コードを開発している.内部構造の計算コードはこれまで使用していたものと同様であるが,大気構造のコードについては改良しなくてはならない.大気構造は放射対流平衡構造を解くための計算手法を用い,凝縮が起こる場合の温度構造(擬湿潤断熱温度勾配に従うことが知られている)と放射層の温度構造を求めるようにする. これら計算コードを改良しテスト計算をした結果,大気中で凝縮が起こるような状況だと,冷却が早く進行する傾向があることがわかった.これは惑星内部で組成勾配がある状況と対照的であると言える.二年次は大気と内部構造の相互作用,特に凝縮による大気構造の変化とそれに伴う熱進化への影響に注目し,比較的低温度環境下にあるスーパーアースの内部構造と熱進化を議論し,その結果を国際誌の投稿論文にまとめたいと考えている.
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Research Products
(2 results)