2014 Fiscal Year Annual Research Report
酸素結束型二方向性マクロジオライド天然物の合成と活性のスイッチング機構の解明
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14J11520
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
君嶋 葵 北里大学, 感染制御科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 抗嫌気性菌活性 / 全合成研究 / マクロジオライド |
Outline of Annual Research Achievements |
偽膜性大腸炎は抗生物質投与による腸内細菌叢の変化に伴い、偏性嫌気性桿菌であるClostridium difficileが異常繁殖し、毒素を産生することで炎症を引き起こす重篤な消化器障害であり、既存薬の塩酸バンコマイシンに代わる狭域スペクトル薬の開発が期待されている。そのような背景のもと北里研究所において嫌気性菌に対し選択的抗菌活性を示す天然物として見いだされたLuminamicin (1)に注目し、全合成を基盤とした新規抗感染症薬のリード化合物の創製を目指すこととした。更に、類似の天然物類とは異なる活性を有する1の活性のスイッチング機構の解析も行う。 これまでに、1の全合成に向け上部と下部の二つに分割し、上部についは構築法の確立を達成し、下部についても母核となる酸素架橋含有シスデカリン 2の合成を達成している。これらの知見を基に1の全合成に着手した。そして、全合成に向け残る課題は三置換オレフィン含有10員環ラクトンの構築であり、これまでに10員環ラクトン形成にはJuliaカップリングが最適であることを見出している。まず、酸素架橋含有シスデカリン 2から種々変換することで、カップリング前駆体とした。次にJuliaカップリングを行った。検討の結果、二つの塩基を用いることで分子内Juliaカップリングが進行し、目的の10員環ラクトン選択的に得る条件を見出した。これにより、酸素架橋シスデカリン含有10員環ラクトンの構築を達成した。今後は三置換オレフィン部分を構築し、既に確立した手法を用いて上部を構築することで全合成を達成する予定である。また、合成中間体の活性評価も行った。酸素架橋部分を有するいくつかの合成中間体の何れにおいても抗嫌気性菌活性を示さなかった。これにより、類似天然物から推測する活性のスイッチング機構の解明に向けて大きな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、二つのフラグメントの合成を達成し、更に鍵反応である分子内Juliaカップリングを成功させることで、酸素架橋シスデカリン含有10員環ラクトンの構築を達成した。以上のことからLuminamicinの全合成達成は目前となっており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三置換オレフィン構築後に、これまで確立した手法を用いてLuminamicinの合成を達成する。その後、全合成経路から新規誘導体の合成も行い、合成中間体を含めた活性評価を行うことで構造活性相関の解明からの活性のスイッチング機構の解明を行い、新規抗感染症薬のリード化合物の創製を行う。
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