2014 Fiscal Year Annual Research Report
トリフェニルアミンの反転制御に基づく新しい強誘電性材料の開発
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14J11528
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 泰勳 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | トリフェニルアミン(TPA) / カラムナー液晶 / 強誘電性 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は現在トリフェニルアミン(TPA)誘導体の自己組織化と機能発現に関して、分子デザインの観点から調べている。これまでにTPAの側鎖にアミド基を介した没食子酸誘導体を導入することでヘキサゴナルカラムナー相を発現する液晶材料の開発に成功している。取り分け、没食子酸に付けたアルキル鎖の長さが8と12の時大きなドメインが観測される。興味深いことに、これらの液晶材料を2枚のITO電極に挟み電場を印加すると、カラムが垂直に配向することが観測され、現在有機半導体としての可能性を調べている。 この固体状態での自己組織能と関連して、希薄溶液中でも1次元超分子ファイバーを形成することが観測できている。驚きだったのは、TPAからなる超分子ファイバーが不斉増幅において、これまで報告されてきた最大値の5倍以上優れた値を示したことだ。一般にアミド基からなる水素結合をドライビングフォースに形成される超分子ファイバーは捻れやすく、右巻き・左巻きのものが存在する。不斉源が全く存在しない場合、右巻き・左巻きのファイバーは等しい割合で存在する。ここに、側鎖に不斉点を有した分子を少しだけ入れることで右巻き・左巻きを偏らせることを不斉増幅と呼ぶが、系全体を偏らせるためには最低でも1%は必要であった。今回、私が開発したTPAの系ではたった0.2%で十分に計全体の不斉増幅が観測された。これはTPAの捩れたプロペラ様コンフォメーションが大きな役割を果たしていると思われる。現在すでに論文をまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は大変勤勉に研究に取り組み、すでに多くの研究成果を挙げている。現在の研究の方向性は当初の研究計画からずれているが、それはひとえに申請者が様々な実験を行った結果、予想外の事実・現象を次々に明らかにしていったためである。取り分け、たった0.2%のトリフェニルアミン誘導体で完全なるキラル増幅の実現はチャンピオンデータであり、超分子化学・材料科学の観点からも大変意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目で合成したトリフェニルアミン(TPA)誘導体からなるカラムナー液晶の強誘電性を調ベル。電場印加によって観測されるSHGシグナルの緩和過程を調ベルことでTPAの反転速度を見積もることが出来る。TPAの反転が分子デザインの差によらず液晶相でも速い場合、上述の配位結合を利用した分子デザインに切に替える。もた強誘電性が確認された場合はスキャンニングプローブ顕微鏡(SPM)を用いた極性観察に挑む。SPMは表面観察であるため、カラムの配向を制御するのに電極で挟んで電場を印加する方法が取れるない。コルナポーリングのようの非接触な電場印加により配向させる方法を検討する。また複数の分子デザインで強誘電性が観測された場合、カラムの直径が2つの強誘電性カラムにおいて等しくなるように測鎖の大きさを調整する。一般に異なる2つのカラムナー液晶を混ぜたら相分離するが、同一コアで測鎖の大きさが限りなく近ければ右の図のようにランダムにカラムが混さり合うことが期待される。2つの分子デザインの異なるカラムにおいて実現される強誘電性においては敷居電場(自発分極が反転する電場)が異なるはずである。2つの強誘電性カラムの混合からなる材料は2つの敷居電場を実現し、ひとつの材料において4つの安定した極性状態を実現できる可能性がある。もちろん、そのためにはカラムがそれぞれ独立して強誘電性を示さなければならないなど、克服しなければならない課題も多いが、このような系は無機物では実現できない有機物独自の系で、然るべき材料を開発できたら挑戦したい。
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