2014 Fiscal Year Annual Research Report
権力化する「環境」と地域社会の戦略的順応-コスタリカ自然保護区制度の構造と実際
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14J11545
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
武田 淳 横浜国立大学, 環境情報学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | エコ統治性 / eco-governmentality / コスタリカ / 環境政策史 / ウミガメ保全 / 生物多様性保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生物多様性保全の分野おいて先進的と言われているコスタリカ共和国の政策を、制度の構造と地域社会の実践の両面から明らかにすることである。そこで、①同国の資源管理政策がどのように制度化をみたのか、②当該制度の下、実際の資源利用者である地域社会では何が起こっているのか、という二つの問いを立て研究を進めてきた。 平成26年度の第1四半期は、①の研究を発展させるため、コスタリカの生物多様性保全政策に関わる先行研究の整理を行った。それと並行して、研究の理論的枠組みとなる「エコ統治性」(eco-governmentality)に関わる先行研究を整理した。第2四半期には、②の研究を発展させるため、約1ヶ月半、コスタリカの村落地域にてフィールドワークを行った。当該村落にて、住民らが20年間に渡り自主的に行ってきたウミガメの保全活動について、詳細な歴史を聞き取ると共に、関係住民への半構造インタビューを実施した。第3四半期には、①と②の研究成果を論文としてまとめ、2本の論文を発表した。第4四半期は、来年度に発表する予定の書籍(共著・博士論文の序章に相当)および論文の執筆を行った。 発表論文では、コスタリカの自然保護区行政の歴史を整理した。同国は、環境政策が進んだ国として知られている一方で、その詳細は、日本では部分的にしか紹介されていない。そのため、本稿は、当該分野の基礎文献として今後活用される可能性を有している。また、分析で使用した理論枠組み「エコ統治性」は、近年、環境社会学や文化人類学の中で注目されている概念である。当該理論を再考する試みは、平成27年度に行っていく予定であるが、26年度はそのために必要な、筆者の問題意識と先行研究の整理と論文中で記すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を完成させるために必要な文献資料の整理、および現地調査による一時資料の収集のうち、約半分の作業が完了した。それらを元に博士論文の前半部の要約にあたる論文「協働型資源管理にみるエコ統治性の諸相」も発表することができた。また、博士論文提出に必要な要件である投稿論文数も満たすことができ、進捗はおおむね順調である。研究テーマも、特別研究員採用時から変更なく、研究計画の通りに進んでいる。 一方、今後の課題としては、現地調査で渉猟した一次データの精度を上げることが挙げられる。とりわけ、ウミガメの保全活動に従事する現地のステークホルダーの関係分析が不十分である。この点は、論文投稿時に査読者より指摘された点でもあり、今後の追加調査をもって対応したい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に行った、指導教官他からのピア・レビューおよび論文発表時にいただいた匿名の査読者らからのコメントより、本研究を完成する上での課題2点が明確になった。第一に、ウミガメの保全を巡るコスタリカ国内法および環境法体系に関する整理が不十分であること、 第二に、 現地の一次資料に関して、 保全活動を行っているステークホルダーの関係分析が不十分であることである。 これらの課題に関して追加の調査を行い、 博士論文を書き上げることが本年度の目標である。 研究の計画と手法についてであるが、 第一の課題については、 6月までに調査を進め、 論文の一節にあたる 「コスタリカの環境法体系」および「ウミガメの保護・保全に関わる法規制の歴史」を完成させる。手法は、文献調査を基本とする他、 司法省を通じて入手した各規制法の原文の分析による。 また、 ここでの成果を踏まえた上で、 7月には学会(日本沿岸域学会)にて報告を行う。 学会報告でいただいたコメントを踏まえた上で、 8月に追加の現地調査を実施する。調査は、第二の課題の分析に焦点を絞り、 対象村落における参与観察を行う。 調査期間は一か月程度とする。 調査の成果を元に、 博士論文の一節にあたる 「地域共同体による 『エコ統治』 の実践」 を完成させる。 以上の追加調査と執筆作業を行った上で、 11月を目途に一つの研究論文としての形を整える。 ここで、 指導教官他からのピア・レビューを受け、若干の修正を加えた後、 平成28年1月に博士論文を提出する。
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Research Products
(2 results)