2014 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質の神経発生におけるAMP依存性キナーゼの役割解析
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14J11628
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 泰樹 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | AMPK / ダイニン / 神経発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
AMP依存性キナーゼ(AMPK)は細胞内エネルギーセンサーとして役割がよく知られており、細胞内ATP濃度の変化に応じてエネルギー代謝関連分子の機能を調節することで細胞内エネルギーを調節すること分かっている。本研究ではこれまでAMPKの大脳新皮質発生における神経細胞移動の制御、微小管モータータンパク質である細胞質ダイニンの機能制御という新たな役割を担っていることを明らかにしてきた。しかし、AMPKの既知の標的分子でダイニン関連の分子は報告されておらず、神経細胞においてAMPKがどのようにダイニンの機能を制御するのかは分かっていなかった。そこで本年度私は神経細胞においてAMPKがダイニンの性質に与える影響を精査した。またダイニン関連分子の中でAMPKの新規リン酸化標的の探索を行った。 細胞質ダイニンの機能制御においてダイナクチンという分子複合体が重要な働きを担っていることが分かっており、二つの複合体はそれぞれダイニン中間鎖とp150gluedという構成要素を介して相互作用している。私はAMPKがダイニンとダイナクチンの相互作用を制御しているのではないかと考え、初代培養神経細胞をAMPKの活性化剤、阻害剤で処理し、共免疫沈降法によってダイニン-ダイナクチンの相互作用の度合いを比較した。その結果、神経細胞においてAMPKがダイニン-ダイナクチン複合体の相互作用を負の方向に制御していることが分かった。次にGSTとダイニン中間鎖の融合タンパク質(GST-Dynein IC)を大腸菌に強制発現して精製し、AMPKによるin vitro キナーゼ反応を行った。その結果、AMPKがダイニン中間鎖の複数のセリン残基をリン酸化していることが分かった。細胞質ダイニンは1つのタンパク質で細胞内の多様な役割を担っているがその制御機構には不明な点が多い。本研究成果は細胞内エネルギーセンサーAMPKの新規機能を明らかにするだけでなく、細胞質ダイニンの制御機構の理解にも大きく貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究を進めるにあたって、ダイニン関連分子におけるAMPKの新規リン酸化標的の探索が順調に進むかどうかが成果を得られるかが不明瞭であり、かつ重要な点であった。当初は標的を見つけることだけが本年度の目標であったが、標的を見つけさらにその機能的な役割までを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は質量分析等によりAMPKによるダイニン中間鎖のリン酸化における標的アミノ酸残基を特定する。その標的アミノ酸残基のリン酸化状態を特異的に認識する抗体を作製し、培養細胞や発生期の大脳新皮質における局在を精査する。さらに標的アミノ酸残基に変異を入れた変異体ダイニン中間鎖を用いて細胞質ダイニンのライブイメージングなどを行い、AMPKによるダイニン中間鎖のリン酸化が細胞質ダイニンの機能をどのように制御しているかを明らかにする。さらに神経発生における神経細胞移動以外のプロセスにおけるAMPKの機能について、今年度得られたダイニン-ダイナクチンの相互作用の制御という役割に着目して解析を進めていく。
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