2014 Fiscal Year Annual Research Report
第一周期遷移金属を含む多核反応場による脱水素カップリング反応の開発
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14J11645
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長岡 正宏 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | クラスター / ルテニウム / 第一周期遷移金属 / 脱水素 / C-C結合形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルテニウムとコバルトから成る三核クラスターを用いて、ピリジン類の触媒的な脱水素カップリング反応を検討した。ルテニウム等の高周期遷移金属から成るクラスターでは、2,2´-ビピリジン類の収率は50%程度に留まるが、コバルトを導入したことで収率は90%程度にまで向上することを見出した。反応の経時変化からは、コバルトを含むクラスターでは反応速度が上昇しているだけでなく、生成物である2,2´-ビピリジン類の阻害を受けないことが明らかとなった。基質適用範囲を調査したところ、ピリジンの4位にメチル基、tert-ブチル基、およびジメチルアミノ基が結合したピリジン類においてもカップリング反応の進行が観察された。反応機構を明らかにするため、コバルトと同族のロジウムを含むクラスターとピリジン類の化学量論反応を検討した。その結果、ピリジンの2位のC-H結合が切断された三重架橋ピリジル錯体が選択的に得られた。この中間体は、触媒サイクルの最初の段階に相当するものと推測される。今後は、更なる反応機構解明を目指すと共に、基質適用範囲の拡充を図る。 ピリジン類のカップリング反応が進行したことにヒントを得て、他の含窒素芳香環と三核クラスターとの反応を検討した。ピロール類、キノリン類およびインドール類を調査した結果、カップリング反応の進行は観察されなかった。しかしながら、インドール類との反応においてトリエチルシランを共存させると、脱水素タイプのN-シリル化反応が触媒的に進行することを見出した。通常、脱水素型のN-シリル化反応は過剰量の水素受容体が必要とされているが、本反応ではそのような添加剤は全く必要ない点で優れている。今後は、より困難とされている炭素上へのシル化を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コバルトを含む三核クラスターを用いた脱水素カップリング反応の開発に取り組んだ。4-置換ピリジン類については、反応条件の最適化や基質適用範囲の探索だけでなく、化学量論反応を検討することで反応中間体を単離することができた。このような知見は、今後の触媒設計において非常に重要であると考えられる。 更に、本年度は三核クラスターを触媒とした脱水素カップリングによるインドール類のN-シリル化反応を開発した。通常、脱水素型のインドール類のN-シリル化反応は過剰量の水素受容体が必要とされているが本反応では、そのような添加剤は全く必要なく、環境調和性に優れた合成である。
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Strategy for Future Research Activity |
ピリジン類のカップリング反応については、更なる反応機構解明を目指し、コバルトを含む三核クラスターとピリジン類との化学量論反応を検討する。そこで得られた知見に基づき、新たなクラスター触媒をデザインする。具体的には、支持配位子や架橋配位子をチューニングし、触媒の活性および安定性の向上を図る。また、クラスター反応場の分極を利用したクロスカップリング反応にも挑戦する。 インドール類のN-シリル化については、反応条件を最適化すると共に反応機構の解析に着手する。加えて、より困難とされている炭素上へのシリル化反応にも取り組む。 初年度の研究により、ルテニウムとコバルトからなる三核クラスターは含窒素化合物のカップリング反応および官能基化反応に有効であることが見出された。今後は、ピロール類、キノリン類等の含窒素化合物についても検討する。
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Research Products
(6 results)