2014 Fiscal Year Annual Research Report
低温プロセスによる酸化物半導体の欠陥制御技術の開発とフレキシブルデバイス応用
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14J11657
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
戸田 達也 高知工科大学, 環境理工学群, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 薄膜トランジスタ / IGZO / 酸化物半導体 / フレキシブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、低温プロセスによる高性能・高信頼性酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)の実現を目的に行っている。研究目的達成の為に、本年度はInGaZnO(IGZO)上にプラズマ支援化学堆積(PE-CVD)法によりSiOxチャネル保護膜を成膜する際、IGZO膜中へ拡散した水素がTFT特性・信頼性に与える影響を調べた。 二次イオン質量分析法(SIMS)により評価したIGZO/SiOx積層膜中の水素量と、TFT特性・信頼性、CV特性の相関性に関する考察より、上層のSiOxからIGZO膜中に拡散した水素はそのほぼ全てがIGZOの抵抗率を減少させるシャロードナーとして働くと同時に、TFT特性・信頼性の劣化要因である、IGZO膜中、及び絶縁膜界面に存在する欠陥準位を終端し不活性化することを明らかにした。これらの研究成果は1件の国際会議で発表し [SID Mid Europe Fall Meeting 2014, Stuttgart ,Germany, Oct. 10th, 2014]、1件の査読付き英語論文に掲載された [T. Toda et al., IEEE Transaction on Electron Devices, 61, 3762 (2014).]。 IGZOの電子物性に関する水素の影響に関して議論の途上にある中で、本研究によりチャネル保護膜からの拡散水素がTFT特性・信頼性に与える影響について一定の結論を得る事ができた。また水素によるIGZO膜内・絶縁膜界面欠陥の不活性化は、低温プロセスによる高性能・高信頼性酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)の実現においても有用であると考え、今後も応用的研究を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IGZO TFT特性・信頼性に対するSiOxチャネル保護膜からIGZOチャネル中への拡散水素の影響に関して研究を行った結果、水素によるIGZO膜内・及び絶縁膜界面欠陥の不活性化という、当初研究目的である低温プロセスによる高性能・高信頼性酸化物半導体TFTの実現に向けた技術的方針となる研究成果を得る事ができ、WOS-Q1ランクの論文誌(IEEE Transaction on Electron Devices)への論文掲載に至った。また約2ヶ月にわたり独Stuttgart大学、Norbert Fruehauf教授の研究室(Institute for Large Area Microelectronics)に滞在し、有機ゲート絶縁膜を用いたIGZO TFTの低温形成に関する研究を行い、帰国後も習得した技術・知見を活かして、要素技術開発を含めた研究に引き続き取り組んだ。その結果、現状として200 ℃以下の低温プロセスによるIGZO TFTの作製・動作を実現しており、次年度における研究目的達成が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現状として有機ゲート絶縁膜を用いることで、200 ℃以下の低温プロセスによるIGZO TFTの作製・動作は実現したが、特性・信頼性に関しては更なる向上が望まれる。そこで今後は低温プロセスにおけるIGZO TFTの特性・信頼性向上を目的に、下記①,②に示す研究課題に取り組み、研究成果の統合により、最高プロセス温度150 ℃で、ポリエチレンナフタレート(PEN)上へ直接形成したIGZO TFTにおいて、移動度10 cm2/V/s以上、S値0.2 V/dec.以下、閾値電圧0 V以上、ストレス試験後の閾値電圧シフト量1 V以下の特性・信頼性を実現することを目標とする。
①有機ゲート絶縁膜を用いた自己整合型IGZO TFTの特性・信頼性向上 低温形成可能なスピンコート法による有機ゲート絶縁膜を用いた、IGZO TFTの特性・信頼性向上に取り組む。その際TFT構造として、スパッタ法によるIGZO成膜に伴う有機ゲート絶縁膜へのダメージが無く、寄生容量最小化により回路動作速度の高速化が可能なトップゲート・セルフアライン構造を採用する。また特性・信頼性向上を目的に、適切な有機ゲート絶縁膜材料の選択・高品質化や、無機材料であるIGZOと有機絶縁膜の良好な界面形成を目指した研究に取り組む。 ②水素による欠陥補償効果の検証 水素によるIGZO膜内・及び絶縁膜界面の欠陥補償効果に着目し、低温プロセスにおけるより効果的な欠陥補償手法として、成膜ガス中に水素を導入したスパッタ法によるIGZOの成膜を試みる。成膜中に取り込まれた水素がIGZOの電子物性に与える影響の評価、及びアニール温度の違いによる水素の挙動の変化を焦点に研究に取り組む。
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Research Products
(3 results)