2014 Fiscal Year Annual Research Report
人為起源塩素系物質による中間圏大気組成変動とそのメカニズムの解明
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14J11927
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗林 康太 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | SMILES / 塩素系物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国際宇宙ステーション搭載サブミリ波リム放射サウンダ(以下SMILES)の観測結果を用いた「人為起源塩素系物質による大気組成変動とそのメカニズムの解明」を目的としている。本年度は、1. SMILESの観測データの確からしさの検証と2. 塩素系物質が中間圏オゾンの日変化化学に与える影響についての研究を行った。 1. SMILESの観測データの確からしさの検証 衛星観測によって得られるデータを用いる場合には、観測した大気の再現性がないために、観測データの確からしさを他の観測衛星から得られたデータや化学輸送モデルの計算結果と比較することで検証する必要がある。SMILES観測によって得られた中間圏オゾンと塩素系物質のリザボア分子である塩化水素について検証を行った。 2. 塩素系物質が中間圏オゾンの日変化化学に与える影響 これまで塩素系物質が成層圏オゾンに与える影響については数多くの研究がなされてきたが、中間圏オゾンに対する影響についての研究は十分に行われたこなかった。その大きな理由として中間圏における塩素系物質の観測が困難であったことが挙げられる。そこで本研究ではSMILESが世界で初めて観測した中間圏における塩素系物質(塩化水素・一酸化塩素・次亜塩素酸)の日変化のデータと1次元化学輸送モデルの計算を組み合わせることで中間圏オゾンの日変化化学に与える影響について研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、国際宇宙ステーション搭載サブミリ波リム放射サウンダ(以下SMILES)の観測結果を用いた「人為起源塩素系物質による大気組成変動とそのメカニズムの解明」を目的として、実態把握・プロセス解明・中間圏大気における人為的な影響の解明という3つのステップで取り組む計画である。 本年度は、高精度で中間圏大気における塩素系物質を観測したSMILESデータの確からしさの検証を行い、そのデータを用いることで中間圏における塩素系物質の日変化・高度分布・緯度分布などを通して現在の大気における塩素系物質の実態の把握をすることができた。 また、1次元化学輸送モデル計算を用いることで中間圏オゾンの日変化化学に塩素系物質が与える影響について評価することができた。これは最初の計画にあげた実態把握とプロセス解明において大きな進捗を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は三次元化学輸送モデルの計算結果とSMILES観測によって得られた塩素系物質の比較を行うことで、人為起源塩素の与えた影響の解明を目指す。影響の定量的な評価を行うためには必要となるSMILES観測データの定量化は、誤差解析によって実現を目指す。 三次元化学輸送モデル計算では、人為起源塩素系物質の放出が始まった1980年代の大気から現在の大気の再現を行う。再現された計算結果とSMILES観測によって得られた中間圏塩素系物質の比較を行うことで、人為起源塩素系物質の中間圏に対する影響の解明の実現を目指す。
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Research Products
(1 results)