2015 Fiscal Year Annual Research Report
天王寺方楽人岡昌名に関する写本・楽譜類についての所蔵調査ならびに研究
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14J11955
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
出口 実紀 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 雅楽 / 天王寺方 / 岡昌名 / 新撰楽道類聚大全 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、初年度より実施していた岡昌名に関連する写本、楽譜類の所蔵調査および収集を継続しておこなった。今年度調査を実施したのは、名古屋大学附属図書館、茨城県立歴史館、熊本大学附属図書館である。 名古屋大学附属図書館では、江戸中期から後期に書写された数十種におよぶ雅楽資料の所蔵が確認できた。その種類も笙譜、篳篥譜、笛譜、楽書など幅広く、中には昌名の写本に関連するものもある。また奥書のある資料が多いため、天王寺方、南都方、京都方の分類も可能となり、奥書の無い資料についても譜字の特徴から現在、系統の分類をおこなっている。熊本大学附属図書館では、寄託されている永青文庫の資料を閲覧した。永青文庫については目録が一般公開されているため、事前に閲覧希望の資料を確認することができる。ただし、閲覧点数に制限が設けられていることもあり、今回の調査で閲覧できなかった資料もある。それらの資料については、再度閲覧の機会を持ちたいと考えている。上記の機関以外にも、今年度は昌名に関する重要な資料を入手した。大阪芸術大学図書館に所蔵される狩野文庫マイクロフィルムの資料を見直す過程で、昌名の手による雅楽以外の写本を確認することができた。その写本は『短笛秘伝譜』という一節切の譜であり、これまでに確認できている写本類から鑑みても昌名が雅楽だけに限らず幅広い写本作成をおこなっていた事が見てとれる。 一方、『新撰楽道類聚大全』については、「巻二七祭要楽録一」、「巻二八祭要楽録二」の翻刻を完了させた。初年度に課題とした頭注や割注などの表記、法要で用いられる仏教用語の扱いなど、凡例や書式に関連する検討事項も方針が定まり、凡例および書式の決定を確定させた。次年度以降、決定した凡例、書式に沿って他の巻についても翻刻作業を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の段階で、対象としていた機関への調査は8割が完了していた為、今年度は残り2割の未調査機関について調査を実施した。その結果、年次計画に示した「資料調査については2年目で終了させる」という目標が達成できた。名古屋大学附属図書館や熊本大学附属図書館は所蔵する雅楽資料の点数が比較的多く、初年度同様に収穫の大きい調査結果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画として、①今年度までに収集した全資料の分類および整理、②底本の原本確認、③『新撰楽道類聚大全』の翻刻作業の完了、以上の3点を主軸とする。①については、年次計画で示したように資料の種別、年代、丁数、巻数、所蔵場所等の書誌情報をまとめ、昌名および天王寺方資料の一覧を作成する。これによって、全国の大学図書館、公共機関における雅楽資料の所在を明らかにする。②については、『新撰楽道類聚大全』の翻刻の底本としている、東北大学狩野文庫本の原本閲覧を予定している。翻刻作業を進める過程で、マイクロフィルムでは判読しづらい細かな箇所等について原本での確認を必要とするからである。この作業を踏まえて、③翻刻の編集作業を完了させる。
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